アフガン軍をパキスタンへ派遣か

2008.6.16



 military.comによれば、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領が、自衛のためにパキスタン国内の武装勢力と戦うために軍を越境させると圧力をかけました。これはパキスタン国内からアフガニスタンへアフガン軍と連合軍の兵士を殺すために来る武装勢力を阻止することを理由としています。大統領がこうした発言をするのは初めてです。

 カルザイ大統領は、タリバンの指導者ベイトラ・メスード(Baitullah Mehsud)とムラー・オマル(Mullah Omar)に対して、アフガン軍が彼の本拠地で彼らを攻撃すると警告しました。メスードはベジナール・プット氏(Benazir Bhutto)を暗殺した容疑者です。大統領は、ここ2ヵ月間、ヘルマンド州(Helmand province)のガームザー(Garmser)での戦いでは、武装勢力のほとんどがパキスタンから来た者だったと述べました。

 地図を見れば分かりますが、ヘルマンド州はアフガン南部の地域です。それも、イラン寄りの地域です。こういう場所で、メスード配下の武装勢力が活動しているのは奇妙な感じがします。彼は南ワジリスタンのトライバル・エリア(South Waziristan tribal area)を本拠地にしています。ここはパキスタン北西部(地図中では「Thal」の南西付近)で、ヘルマンド州からはかなり離れています。こうした動きが当たり前なのが、この地域の変なところです。国境線の概念も、日本人が考えるようなものとは違っています。実のところ、アフガニスタンでの治安状況はほとんど分かりません。ニュースは断片過ぎて、全体像が把握できません。今回のカルザイ大統領の発言も、どこまで本気なのかは分かりません。メスードを牽制するためのアドバルーンということも考えられます。

 これらだけ見ても複雑怪奇ですが、このほかにアフガンは、トルクメニスタン 、ウズベキスタン、タジキスタン、そして中国とも国境を接しています。これらの国々との関係もほとんど情報がありません。報じられるのは主に大きな作戦だけで、武装勢力の動向は闇の中です。アルカイダが消滅したあとも、この地域では対立が続きます。アフガンは過去からずっとそうした歴史を辿ってきた国です。そのことは、対テロ戦争のおかげで忘れられがちです。

地図は右クリックで拡大できます。

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