テロ事件は最低レベルへ減ったけども?

2008.6.2



 5月の米軍の死者数は月間では過去最低となり、民間人の死者も大幅に減りました。果たして、これが長期的な傾向として定着するのかという疑問をmilitary.comが報じました。

 5月には、21人の米兵が殺害され、4人は非敵対的な理由で死亡しました。警察官を含むイラク人の死者は532人でした。米兵の死者数は最低だった2004年2月よりも1人多いだけで、イラク人の死者は今年最低だった4月の1,080 人を大きく下回りました。しかし、誰もがこれが長期的な傾向なのか判断に迷っています。記事は2005年1月の選挙の際に、同じようにテロ事件が減ったことを指摘しています。この時は、その後、再びテロ事件が増加しました。軍事アナリストは楽観論に対してしています。指摘し、

 ここでもう一度、これが正規戦ではないことを思い出すべきです。正規戦の場合、ある地域での抵抗が止んだら、友軍が前進して戦線が前方へ移動します。敵は退却して再編成を行い、次の戦いの準備を始めます。友軍も同様の態勢をとります。しかし、ゲリラ戦においては、こうした考え方が成り立ちません。現に、5個旅団を派遣したことによる成果は明確に見えていません。テロ事件が減ったのは武装勢力側の都合であり、テロ事件の発生件数は米軍の作戦とは関係なしに推移してきました。現に、増派旅団が撤退しているのに、テロ事件が減るという現状が起きています。

 正規戦なら地域に配備されている敵軍の兵数を調べ、それに見合った戦力をあてることで対処します。敵が動員できる兵数が分かっているのなら、それを目安にして友軍の戦力を調整していけますが、イラクの場合、外国人戦士が参入しているので、それらがどう動くかで戦況は大きく変わります。今後、イラクの状況がどうなるのかは、まだ闇の中なのです。

 なお、オックスフォード・ユニオンにおいて、国土安全保障省長官マイケル・チャートフ(Homeland Security Secretary Michael Chertoff)が、アルカイダ系のテロリストによる核攻撃の可能性は低いとする講演を行ったという記事も目を惹きます。

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