military.comが「アメリカの役割は風前の灯火」という記事を掲載しました。通常よりもかなり長文で、イラクで交渉中の安保協定について書いています。
イラクとアメリカの交渉は続けられていますが、駐留する米軍基地の数、米軍と請負企業に対する免責、容疑者の拘留権、イラク政府の許可なく戦闘できること、航空の統制の点で難航しています。これらは前回報じられた時とあまり変わっていないようです。記事は長文ですが、その要旨はアメリカとイラクの交渉が行き詰まっており、ギリギリのところで続けられているということです。交渉の内容はすべて公表されていないため、記事にはあれこれと書いてあるものの、具体的な事実関係は不明です。しかし、ぜひとも詳しい情報を知りたいところです。
同じような記事が、表現を変えて報じられ、タイトルが差し迫った内容なのは、交渉がかなり厳しいことを暗示していると受け取るべきです。ひょっとしたらですが、予定外の事態が起こるのかも知れません。文末に書かれているマリキ首相の言葉がそれを示しています。「イラクは利用できる別の選択肢を持っている。イラク政府は、望むならば、国連に独立した領土イラクにいる国際部隊の駐留を終了させるよう要請する権利を持っている」。(これは、アメリカだけでなく、航空自衛隊の撤退も意味します)
ブッシュ政権は任期を終える前に少しでも格好をつけようと、外交戦を展開しています。そのひとつであるイラクとの安保協定が結べないと、政権に対する評価は極めて厳しいものとなるでしょう。当然、それは大統領選挙にも影響します。すでに、オバマ氏が若干のリードを見せていますから、ブッシュ政権は少しでもよい材料を集めて、マケイン氏を援護しなければなりません。安保協定が頓挫すれば、撤退を主張するオバマ氏を有利にしますし、駐留を公言しているマケイン氏にはダメージになります。
駐留を主張する側は、撤退はこれまで命懸けで戦ってきた兵にしたいして申し訳が立たないとか、失礼だとか言います。しかし、現在のような行き詰まりを招く戦争をはじめたこと自体を問題とすべきです。意味のない戦争で兵士が死ぬことの方が、よほど悲劇です。
アメリカの民主主義は世界にとって必要です。早くその力を発揮できるように、アメリカは変わらなければなりません。オバマ氏はそうした期待を背負って第44代大統領にならなければならないのです。
7月中に安保協定が合意に達するかどうかは、非常に重要な問題です。注目が必要です。