テロ国家指定解除に関する報道を少し前まで遡って、状況を眺めてみました。
11日に行われた日本と北朝鮮の公式実務者協議で、日本はよど号乗っ取り犯の引き渡しと拉致問題に関する日本政府の見解を北朝鮮の代表に伝えました。これに対して12日に、北朝鮮は、よど号犯の引き渡しに協力すること、拉致問題を解決済みとはせず、解決に向けた具体的行動を今後取るための再調査を実施することを約束しました。この辺からテロ支援国の指定解除に向けて北朝鮮が日本に妥協していることは間違いありません。11日夜のタイミングで、福田康夫首相は「よど号犯引き渡しは、拉致問題解決には直接つながらない」と発言しています。政府内部の思惑に逆行するような発言ですが、これは拉致問題を軽視しているとの批判を避けるための発言でしょう。これらの回答に対して、日本政府は13日夕方に船舶の入港禁止、航空機によるチャーター便の乗り入れの規制を解除すると発表しました。この辺の動きが、テロ支援国指定解除に向けて、日本政府と米政府の間で協調が取れていたのかどうかが気になります。
14日、バーシュボウ駐韓米国大使が決定的な発言をしています。「米国は、テロ支援国指定解除の前提条件は6カ国協議共同声明の履行と協議の合意に基づく寧辺核施設の解体だという点を明確にしてきた」。拉致問題について6ヶ国協議の当事国は日本の主張に理解は示しています。しかし、核計画の解体が優先事項とされ、日本はそれに妥協せざるを得なかったのでしょう。今朝、アーミテージ前国務副長官が、テロ支援国指定に拉致問題が含まれていると発言していたことが報じられました。国務省のウェブサイトにも書いてあるように、やはり拉致問題はテロ支援国家の定義に含まれるのです。しかし、いまやアーミテージはいません。テロ支援国の定義は、アメリカの都合で変更される程度の確実さしかないということです。
現在のように、ご褒美を北朝鮮に与えながら話を進めていると、向こうは少しずつ褒美が出る方が都合がよいと考えるようになります。だから本来なら、すべての問題が解決してから経済制裁を解除すると、高飛車な態度を取る方が得策ということになります。ブッシュ政権が外交的な成功を欲しがる理由はありすぎるほどです。最近、ブッシュ政権で外交的な成功はほぼないに等しいのです。それがアメリカの腰が低い理由です。
この種の問題は、報道記事だけからは実状が分かりません。協議の内容もごく一部しか報じられませんし、各国間の外交も限定的な情報ばかりです。気をもむことの方が多いものです。