military.comによると、6月1日をもって、オーストラリア軍がイラクから撤退しました。すべての部隊は数週間かけて祖国へ帰還します。オーストラリア軍からは死者は出ず、6人が負傷しただけでした。しかし、国内のイラク政策への批判は大きく、同日、前首相ジョン・ハワード(former Prime Minister John Howard)が国際刑事裁判所に提訴されました。オーストラリアはすでに完全な反イラク戦争の立場になったといえます。ハワード裁判の行く末は極めて興味深い展開になるでしょう。
アメリカでは、映画界が反イラク戦争を掲げた作品が製作するようになり、バラック・オバマ氏が民主党の大統領候補に決まる見込みがほぼ確実です。これはアメリカ人が大きな変革を望んでいる証拠です。昨日も、CNNだったと思いますが、コメンテーターが共和党のジョン・マケイン氏が意見を始終変えることに対して厳しい批判を口にしていました。「目的を達するまでは、百年でもイラクに駐留する」と言った数日後には、世論を慮って撤退論に鞍替えしました。あるドキュメンタリー番組では、イラク政策は失敗だったと述べたこともあります。それが直近の世論を見ながらコロコロと意見を変えるのですから、今後もどう変わるかまったく予測がつきません。そんな人に大統領になって欲しいと思うかという問題に対して、アメリカ人はこの秋に結論を出すことになります。共和党候補が勝つ見込みはまったくないと私は考えます。秋までイラクの治安に若干の改善が続くとしても、それでテロ問題が解決したわけではありません。アメリカ本土を攻撃した敵はアフガン=パキスタン国境で健在です。
日本はいつどうやって方針転換するのかを考える必要があります。日本は島国で、オーストラリアのように国土が広くありません。大陸というよりは島国としての、外圧の圧迫感を感じやすい気質があります。島国であるために、外国による侵略の危険性は少なく、それ故に現在、北欧諸国が行っているような平和外交を展開できる立場にありながら、戦後はそうした役割を放棄し続けてきました。これは本当に不思議なことです。そして、影響力の強い国から何かを言われると過剰に反応し、それに従わないと大変なことになると考えてきたのです。政治家もマスコミも同じような傾向を常に示してきました。その反動として、過激な政治論が人気を博する傾向も見られます。しかし、本当に必要なのは、地理的な利点を利用して平和外交を展開することです。そのためには、冷静に戦争を見つめ、判断する哲学が必要です。