イラクNo.2指揮官が秋に撤退可能と明言

2008.6.7



 ワシントン・ポストによると、ロイド・J・オースティン3世中将(Lt. Gen. Lloyd J. Austin)は、この秋までにイラクから増派分以外の部隊を撤退させる可能性について、「もちろん可能だ」と述べました。

 2月にイラクで2番目に高位の指揮官となったオースティン中将は「私はいま決定的に明言して、我々が引き下げることを計画しているものを越えて撤退させようとしていると言おうとは思いません」と述べました。また、サドル・シティやモスル、バスラでの攻勢を支援している間に増援部隊を失うことは複雑な気持ちだとも述べました。イラクのアルカイダ組織については、未だ重大な脅威であり、米軍は大きな成果をあげたものの、まだ打倒できていないと述べました。

 イラク駐留米軍は、増派分5個旅団中の4個旅団が撤退し、最大時の約168,000人から約151,000人へ削減されました。来月末にすべての旅団が撤退すると、若干の支援部隊だけが残留するので、増派前の兵数よりも8,000人多い、約140,000人が駐留することになります。オースティン中将は、この残留する部隊をさらに撤退させられるかどうかについて述べたのです。

 北部イラクでトルコとイランが共闘していることが明らかな状況で、部隊をさらに引き揚げられるかどうかは難しい話でしょう。中将が口にしているように、本当は部隊は不足しているのです。その口調からすると、リップサービスの印象が濃厚です。アメリカ人は彼の言を本気にしない方が賢明です。軍が撤退にこだわるのは、やはりそれが大統領選挙に与える影響が大きいからです。部隊数がそのままなら、オバマ陣営が選挙活動にそれを利用するのは明らかです。共和党支持者が多い米軍としては、マケイン候補の応援をしたいのは当然です。そういう意味では、この夏から秋にかけて、知られたくない事実が隠蔽されやすくなる点に注意が必要です。調子のよい情報が流される時は注意しなければいけません。

 military.comで、予備役の少佐が、五大湖国立墓地の中で、迷彩服を着て拳銃自殺をしたことが報じられています。40歳のランス・ウォルドーフ少佐(Maj. Lance Waldorf)は2度アフガニスタンに派遣され、来月からはアフリカに派遣される予定でしたが、それを待たずに自殺しました。この事件で気になるのは、ウォルドーフ少佐が戦闘部隊の隊員ではなかったことです。彼の勤務先はメリル・リンチ社で、軍では民事担当官として病院や学校、道路を造る仕事をしてました。村人から感謝の印に宴に招かれ、長老から指輪を贈られたこともあるといいます。彼の妻によると、少佐には鬱病の徴候が少し見られました。時折、非戦闘部隊の隊員が精神的な問題を抱え込んだという記事をみかけます。直接戦闘に関わらなくてもPTSDになり得るショックを受けることがあるのです。低度のストレスも長期間に渡ると深刻な問題になるのは疑いの余地がありません。ウォルドーフ少佐の自殺はその徴候を示す好例と見るべきです。そろそろ、米軍全体が限界に達しつつあるのです。

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