米・イラク安保協定は暫定版に留まる見込み

2008.7.14



 ブッシュ政権のイラク政策がまたひとつ失敗に終わったようです。7月中に合意にこぎ着けると見られていた安保協定の交渉は、正式な合意文書ではなく、期間と範囲を限定したものになる見込みだと、ワシントン・ポストが報じました。

 協定の期間は2009年だけになる見込みです。イラク側が撤退のタイムテーブルを要求し、アメリカが明言するのを避けるために、短期間の設定を余儀なくされたようです。民間軍事会社の免責条項はすでにアメリカは了承しています。

 本格的な安保協定は、次期大統領に任されることになります。これはブッシュ政権の失態として記録されます。あと半年の任期中に、よいことがブッシュ政権に訪れることはなさそうです。

 実際、さらに悪いニュースがあります。パキスタンの外務大臣シャー・マーモード・クレシ(Foreign Minister Shah Mahmood Qureshi )が、アメリカやその他の外国がパキスタン領内でオサマ・ビン・ラディンを捜索することは認めないと発言した、とmilitary.comが報じました。

 パキスタンの軍隊は十分なだけ配備されており、主権の問題もあるので、外国の軍隊の存在は認めないと、クレシ外相はAP通信とのインタビューで述べました。また、パキスタンの対テロ作戦は、軍事力だけでは十分ではなく、草の根手法の、人びとの心と精神によって達成されるとも述べました。クレシ外相は、ビンラディンはパキスタンにはいないという見解も示しました。パキスタンは以前から、国内での外国の軍隊による対テロ作戦は認めないと主張してきました。

 これはバラック・オバマ氏にとっても問題です。彼は、イラクから撤退して、軸足をビンラディンへ移すと主張しています。これには、海上を出発点とする大規模なヘリボーン作戦、無人攻撃機による偵察や攻撃が必要だと考えられます。しかし、領域内に入ると、パキスタン軍と対立するかも知れないのでは、作戦は行えません。6月に、米軍がパキスタン領内で無人機による攻撃を行ったと、パキスタンは激しく批判しています。軍事活動をアフガニスタンに限るとしても、パキスタン側にビンラディンが逃げ込んだ場合、パキスタン軍が捕まえられるかは疑問です。パキスタン領内にもタリバン派が大勢いるからです。アルカイダを殲滅するのがむずかしいのは、こうした理由もあることを忘れてはなりません。

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