イラクに関する悪いニュースがふたつあります。5月には夏頃に治安権限がイラク軍に移譲されるといわれていたアンバル州ですが、少なくとも今年末まで延期されることになったとmilitary.comが報じました。
理由は、イラク軍にヨルダン、シリア、サウジアラビア国境を防衛する十分な能力がないためです。ペトラエス大将が上院軍事委員会で述べたのは何だったのかと言いたくなる話です。国境防衛の能力なら、5月の段階で見極めできたはずです。このことは、当時でも分かったはずで、意図的に発表を遅らせたのではないかと疑いたくなります。
もう一つは、アメリカの調査チームが、イラクが運営している少年刑務所で、十代半ばのスンニ派の少年2人がシーア派の職員によって殺されていた事実を明らかにしたニュースです。(記事はこちら)
少年は釈放されることになっていましたが、殺害され、職員が床の地を拭き取っているところで米軍に発見されました。翌月、米軍は刑務所へ送る予定だった130人の移送を取りやめました。少年刑務所は大人向けの刑務所よりも環境が悪く、肉体的、性的な虐待を示す多数の証拠が発見されました。施設にはチワワと同じ大きさのネズミがおり、少年たちは独房に50人も詰め込まれ、6歳の男の子も収容されていました。
派閥闘争の凄まじさを実感させる記事です。少年虐待としても重大事件ですし、イラクの治安が安定しない理由を示す証拠としても重要です。いま、イラクではテロ事件が減っていますが、おそらくは、一時的なもので、恒常的な安定にはつながらないと考えられています。このニュースは、それを裏づけるものです。