ワナット村の前哨基地が放棄さる

2008.7.17



 military.comによれば、9人が死亡したアフガニスタン、ヌリスタン州(Nuristan)、ワナット村の前哨基地を米軍が放棄しました。これで、この戦いは武装勢力側が勝ったことになります。(ワナット村の位置は、当初クナール州と報じられましたが、ワナット州へ変更されました)

 15日に米軍が撤退すると、武装勢力がワナット村を占拠しました。軍は20丁以上の銃で地元警察を武装させてから撤退しましたが、警官たちは100人の武装勢力がワナット村に入ると逃げ、隣のクナール州へ入ってしまいました。

 これまで謎だった米軍の兵数ですが、ワシントン・ポストによれば、アフガン軍兵士と合わせて100〜150人だったということです。武装勢力側は200人といわれていますから、多くて2対1の戦力比だったことになります。想像していたよりも守備側は多かったことになります。同紙によれば、この前哨基地はできたばかりで、攻撃を受けるまでに2〜3日しか使われていませんでした。これが負けた理由と関係あるのかどうかは不明です。まだ、基地が完全にできていなかったなどの理由があるのかも知れません。この地域に武装勢力がいるとは知らずに、防備を十分にせずに基地を作ってしまった……とか。実のところ、イラクやアフガンの米軍の活動はよく分かっていません。多くが機密事項なので、一般人が見られるのは開示された過去の情報だけです。この戦いのことも、いずれは明らかにされるでしょう。

 NATO軍は、パトロールやその他の方法で、この地域でのプレゼンスを維持していくと述べていますが、要するにこの地域では、敵の数に応じた兵数を配置できないということです。武装勢力も、これ以上支配地域を拡げるのは難しいかも知れませんが、米軍がこの地域を奪還しないののなら、足場として活用できることになります。この戦いだけを見ても、アフガン全土を米軍が統括できるわけがないことが分かります。

 イラクに関するニュースもあります。

 18ヶ月以上前に始まったイラク増派が終了しました。これから45日間の評価期間がはじまります。しかし、米軍は増派前よりも15,000人以上多い150,000人が残存していると、military.comが報じています。

 現在、増派前と同じ13個陸軍旅団と海兵隊2個旅団がイラクにいますが、兵数は2007年1月の段階よりも10%多くなっています。これは後退する部隊が到着するたびに減っていき、132,000〜135,000人の間に落ち着く予定です。

 評価期間内に、武装勢力が何かを仕掛けてくる可能性は多分にあります。折しも、アメリカの不況はかなり危険な段階に来ています。その原因の一端がイラク戦争にあることは疑いようがありません。ここでテロ攻撃を増やせば、ブッシュ政権に多大な打撃を与えられます。西欧的な軍事常識から言えば、評価期間は米軍と米政府に打撃を与える格好の機会です。もっとも、イスラム武装組織の発想はこうした軍事常識とは外れたこともしてきたことから、その通りになるかは何とも言えません。米軍はそのつもりで態勢を取るでしょう。そこに武装組織が何を仕掛けてくるかで、この先2ヶ月ほどの様相が分かります。すでに、イラク軍の徴募事務所前で自爆テロが起きています。こうした攻撃が今後増えるのかどうかに注目しています。

 military.comによると、南部のカディシヤ州(Qadisiyah)がイラクに権限譲渡されました。予定では、先月に実施される予定だったのが、今月までずれ込みました。これで、イラクに治安権限が引き渡された州は10番目になります。一方で、テロ攻撃が急増していることも、記事には書かれています。

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