MRAPの欠陥をmilitary.comが報じました。国防総省の統計によれば、11月から6月までの間に、MRAPの事故が66件ありました。その内、40件近くが、劣悪な道路条件、脆弱な橋、ドライバーのミスによって車両が横転したことに関係しています。
比較的軽量のMRAP「RG-31」でも横転しやすい問題を抱えています。6月29日にアフガニスタンでグリーンベレー隊員が乗ったMRAPが運河に転落して、3人が死亡しました。MRAPの重量は、爆発で空中に放りあげられることを防止しますが、そのために路肩が崩れて、車両が横転することがあります。イラクでは住民が送電線を低い位置につり下げるため、車両に引っかかり、兵士が衝撃を受けたり、負傷したりします。破壊された建物から突き出ている鉄筋も、問題の原因となることがあります。
4月23日夜、バグダッド北部で、BAEシステムズ社(BAE Systems)が製造した重量19トンのカイマン(Caiman)がかんがい用水路の脇を進んでいた時、事故が起こりました。時速5マイルで90度のターンをしようとした時、ドライバーは余りにも早く操作し、後輪が柔らかい路肩にあたりました。路肩がつぶれはじめ、ドライバーはアクセルを踏み込みました。すると、車両は右側にひっくり返り、スロープを滑り落ちて落水しました。ドライバーが負傷、3人が脱出し、2人が死亡しました。救援に向かった兵士はドアを開けることができませんでした。MRAPのドアは内側に向けて壊すことができないからです。
以前から、MRAPの車高が高すぎて、乗り降りする兵士の足腰に負担をかける問題を指摘してきましたが、このような問題が起こるとは思いませんでした。MRAPが横転しやすいのは、重量の問題だけではなく、重心が高い位置にあることが原因だと思います。もともと、爆弾処理のために開発された防爆型の車両であり、戦闘に用いるために作られてはいません。兵士が戦闘用車両と同じ要領で運転した時、問題が起きてもおかしくはありません。
しかし、送電線に引っかかる問題が今更取り上げられたのは疑問です。それがイラク人の習慣なら、2003年の時点で分かったはずだからです。それに、第2時世界大戦で、道路にワイヤーを張り、車両に乗った兵士の首を切断する戦術が用いられたことがあります。あまりにも古くからある問題ですから、いま発見したみたいに登場したのは妙な気がします。当時は、ジープの前部に鉄筋を立てて溶接し、ワイヤーをカットする対抗策がとられましたから、同じことをすればよいように思われます。
以前から、車両の横転は非戦闘型の死亡事故でよく見る原因でした。戦闘地域では、攻撃を避けるために早い速度で走行したり、夜間に移動したりするため、横転は比較的起こりやすいのです。それが、横転しやすいMRAPの特質で、より増加することになったわけです。こうした問題は、防衛企業や軍から出てくる兵器データでは分からず、実際に使ってみて、ようやく判明するものです。こうした情報は、軍事雑誌に載ることが少ないので、私はこれらの本をあまり頼りにしていません。