米国防総省監察官が請負業者に便宜

2008.7.25



 military.comによれば、米政府説明責任局(The Government Accountability Office)が、国防契約会計監査局(the Defense Contract Audit Agency)の監察官が防衛産業に不利な報告を変更するよう強要し、請負業者の過剰請求を隠蔽し、その調査を妨げようとしたと報告しました。

 2002年に、会計監査局の監察官が「主要な航空産業企業」と、請負業者の見積もりシステムの評価の範囲を制限するという事前の合意をしました。それでも、監察官が問題を見出すと、業者は不満を主張し、監察官は解任されました。最終的な報告書では、その業者が業務に適切であると評価されました。他にも、監察官が業者に350万ドルをよけいに請求するよう仕向けた事例などが紹介されています。長文の記事なので、詳細は原文をお読みください。

 日本の防衛省の汚職事件とほとんど同じ類の状況がアメリカでも起きていることが分かります。監察官がこうした便宜を図るのは、見返りをもらうか、退職後の再就職先を確保するためです。

 国防の世界には特殊な構造があります。巨額の予算のほとんどが、専門メーカーに発注されるため、一般人からの圧力を受けにくい一種の「聖域」になっています。さらに、それは国民の声明財産を守るとか、兵士の安全を確保するといった大義名分がついています。一見したところでは理性的な判断しかないように思われる分野ですが、実はこういう分野でこそ、偽善が行われるものなのです。民間軍事会社が発達したのも、こういう環境があるためです。

 この事件をよく調べれば、背後にいる大物が捕まえられるはずです。しかし汚職があっても、軍需産業がなければ兵器は生産できませんし、軍人をすべてを首にすることもできません。「自分たちの存在を否定することなどできない」という傲慢さが、この分野の人たちにあることは、色々な形で指摘されてきたことです。私は「防衛問題はプロでなければ分からない」のだという驕りを、日本の防衛産業の社員から直接聞かされたことがあります。彼らは、どうにかして民間人が防衛問題に口を出すのを止めさせたいと考えています。だから、自衛官が災害派遣で汗を流す姿を見て、ありがたさを感じるような単純さはすてなければなりません。それとこれとは別問題と割り切る冷たさこそ、真の愛国心というべきです。

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