6月のアフガン戦死者は過去最悪

2008.7.4



 6月のアフガニスタンでの戦死者数は2001年秋以来、最悪となったと、spacewar.comが報じました。AFPが軍の声明に基づいて調べたところでは、戦闘、攻撃、事故において、ISAFの隊員49人が死亡しました。この数字は、2008年中に生じた戦死者122人の40%以上を占めます。

 最も多い戦死理由は、輸送部隊やパトロール中にIEDの攻撃を受けたことです。6月中にイラクで戦死した兵士は、米兵29人を含む31人でした。5月はアフガニスタンで23人が死亡し、敵対攻撃による死者は19人でした。5月にイラクでは21人が戦死し、敵対攻撃は17人でした。2007年1月1日から6月21日まで、アフガニスタンで戦死した兵士は55人、2008年の同じ期間は70人でした。2007年1月の時点で、ISAFの兵数は37,493人、2008年1月の時点では約50,000人でした。

 しかし、ISAFの広報官は、兵士1,000人あたりでの戦死率、交戦ごとの戦死率は、2007年と2008年では同じだと主張しています。

 広報官が悪いイメージを払拭しようとして必死なのは分かりますが、「兵士1,000人あたり」と「交戦ごと」の戦死率をあげても、そこに戦闘の激化は反映されません。このふたつの数字が同じでも、戦闘の発生回数が増えれば、戦死者の総数は増えます。こんな強弁をするのは、それしか方法がないからです。宣伝材料が何もないためなのです。

 気がついたら、イラクよりもアフガンの戦死者が多くなっていました。そこで気になるのは、戦死者がタリバンとアルカイダのどちらとの戦いで死亡しているかです。おそらく、ほとんどがタリバンなのではないでしょうか。最も多くの隊員を殺しているのはIEDで、これは戦闘による戦死ではありませんが、これを埋設しているのは、ほとんどがタリバンでしょう。実質的に、ISAFはタリバンと戦っているのです。

 アルカイダの姿を見ることが少なく、タリバンとばかり戦っているのなら、これはアフガン国民の半分と戦っているようなものです。タリバンはアフガン国民に根強い支持を受けており、若い戦士がアフガン国民から提供されています。以前から言われていたことですが、イラクに次いでアフガンも泥沼状態になったと断定して差し支えありません。ISAFがアルカイダを殲滅するという本来の目的とは別の戦いに忙しく、アフガン軍・警察の訓練も進みません。

 かつてタリバンは勢力を著しく損ないました。それは、アフガン人が組織した「北部同盟」が、米軍の支援を受けてタリバンと戦ったためでした。北部同盟の装備は大したものではありませんでしたが、タリバンを首都から追い出すのに成功しました。いま、北部同盟よりも優秀な装備を持ったISAFがタリバン相手に苦戦しています。北部同盟の一部は、現在のアフガン軍・警察に参加しているのでしょうが、またタリバンを追い出すことはできそうにありません。この状況はおそらく、誰にも改善できないでしょう。  

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