クラスター爆弾禁止条約の効果が現れ始めました。military.comによると、米国防総省が新型のクラスター爆弾を模索しています。
ロバート・ゲーツ国防長官が3ページの覚え書きを発し、2018年以降、クラスター爆弾の子爆弾は99%の起爆率を要すると命じたのです。つまり、10年以内に不発率が1%以下といわれる「最新型」だけでなく、どのタイプのクラスター爆弾でも、子爆弾の不発率を1%以内に収めよということです。これとは別に、来年の6月までに、安全基準を満たさないクラスター爆弾の在庫削減が開始されることが決まっています。
この記事には、ウィリアム・コーエン国防長官が2001年初期に類似したクラスター爆弾の削減を要請していたと書かれています。また、今年の禁止条約の成立により、米議会は、さらに10年間待つべきではないという声が拡がるのは必至で、国防総省にさらに圧力をかけてくる見込みだとも書かれています。
記事によれば、米議会調査部は、99%の起爆率を持つクラスター爆弾を作れるかどうかは疑わしいと、6月の報告書で書いています。「このような高いレベルのパフォーマンスは試験所の状態の管理下では達成可能かも知れないが、柔らかい地面に着地するとか、樹や植物に引っかかるといった、それ以外の管理できない環境ではより多くの不発弾をもたらすかも知れない」。ゲーツ長官は、おそらく、この報告書には目を通しているでしょう。その上で、99%を目指せと指示を出したのだと推定できます。子爆弾の数が多いクラスター爆弾で起爆率99%を求めるのは確かに難しそうです。
先に紹介していますが、米軍が今後クラスター爆弾を使うかどうかは、専門家の間でも意見が分かれています。しかし、今回の出来事は、米軍がクラスター爆弾を今後も使い続けることを示唆しています。記事には、「クラスター爆弾の廃止は米軍や連合国の兵士を危険にさらす」という国防総省広報官のコメントも載っています。もっとも、禁止条約からドロップアウトしたアメリカですから、そのつもりだということは見当がつきますね。
こういう環境下で、現行の危険なクラスター爆弾の削減が決まり、起爆率の高いクラスター爆弾の開発が指示されたことは、禁止条約の成果だと言えます。こうした条約が、議論から外れた国に対しても、実質的な効果をあげられることを忘れないことです。
問題は、議会調査部の報告にあるように、99%の起爆率が達成可能かどうかということです。現用のクラスター爆弾は構造が単純なものが多く、それを見る限りは、99%の起爆率はかなり難しい感じがします。もちろん、マイコン内蔵で、自分で状況を判断して起爆するタイプの子爆弾を作ることは可能でしょうが、複雑な機械はそれだけ故障しやすく、長期間の保存にも向きません。また、コストがかさむという問題もあります。実戦でのパフォーマンスは実験時のそれを下回るのが常識ということを考えると、実現が困難なのは当然です。
しかし、これまで大きな技術的な革新がなかったクラスター爆弾ですから、画期的なアイデアが事態を一変させる余地を含んでいます。衝撃で爆発する方式に問題があるのだから、別の方法を考えてみるしかありません。なにより、武器産業界にとっては、新しいビジネスチャンスです。いち早くこの条件を満たすクラスター爆弾を開発した企業が受注を実現します。
付記しますが、空母エイブラハム・リンカーンがイラク戦域から、アフガニスタン戦域へ、数隻の艦船と共に移動されることになりました(記事はこちら)。アフガン情勢の悪化による移動とみられています。