グルジア紛争の停戦6カ条

2008.8.22



 earthtimes.orgに、グルジア紛争の6カ条の停戦合意が掲載されていたので掲載します。

  1. 参加者は暴力を行使しないこと。(サルコジ)これはオセチア人、アフハジア人、グルジア全土、ロシア人すべてに適用する。
  2. 停戦すること。
  3. 人道的支援の接近手段を与えること。
  4. グルジア軍が本来の地域へ帰還すること。
  5. ロシア軍が南オセチアで始まった敵対行動以前にいた位置へ退却すること。ロシア人の平和維持軍が国際的な監視メカニズムが到着するまで付加的な保安手段を実行すること。(サルコジ)こうした措置は南オセチアの近接地域だけに影響を与え、グルジアの全領域には及ばない。
  6. 南オセチアとアブハジアの安全保障の手段と安定に関する国際的な議論をはじめること。

  1. No recourse to use violence between the protagonists. Sarkozy: This applies to everyone: Ossetians, Abkhazians, Georgia in its entirety and Russians.
  2. The cessation of hostilities.
  3. The granting of access to humanitarian aid.
  4. The return of Georgian armed forces to their usual quarters.
  5. Russian armed forces to withdraw to the positions held before hostilities began in South Ossetia. Russian peacekeepers to implement additional security measures until an international monitoring mechanism is in place. Sarkozy: These measures affect only the immediate vicinity of South Ossetia and in no instance the entire territory of Georgia.
  6. The opening of international discussions on the modalities of security and stability of South Ossetia and Abkhazia.


 「(サルコジ)」(Sarkozy:)は、フランスのサルコジ大統領が追加させた合意条件です。サルコジ大統領は、これで外交にも強いことを証明できたようです。6番目の項目はグルジア大統領の要請で追加されました。

 ロシア軍が南オセチアの周辺に警備地域を設けているのは、この停戦決議に従ってのことだと分かります。国内メディアの多くは「緩衝地帯」という表現を用いていますが、この言葉は、どちらの側にも属さない地域を指します。ロシア軍が実効支配している地域を指す言葉としては適当ではありません。英語では「security zone」と書いている文章が多く、私は「警備地域」と訳しています。

 停戦合意では、南オセチアの近接地域がどこなのかを具体的には記していません。これについては、ロシアにその判断が任されているわけです。当然、ロシアはできるだけ多くの警備地域を設定しようとします。

 ヨーロッパ諸国は、ロシア軍が警備地域に駐留し続けるのが既成事実化する前に監視団を送り込みたいので、OSCEが素早く動いているわけです。派遣される監視団のメンバーは軍人が中心になります。彼らは警備地域をパトロールし、両軍が何らかの活動を行っている形跡がないかを調査します。当然、車両の色やヘルメットなどの制服は停戦監視団であることが分かるものに変更されます。そして、停戦合意が国連で討議され、承認されることで、この停戦監視団がそのまま国連停戦監視団となるわけです。アメリカが支援物資の輸送のために戦闘艦を派遣したことは、黒海の緊張を一時的に高めます。イージス艦によりロシア空軍の活動がモニタされるなど、ロシア軍にとっては面白くない状況が生まれるからです。それでも、これは一時的な圧力に限定されるでしょう。

 ロシアは慌ててグルジアに侵入したものの、状況はロシアの目的達成を阻んでいます。かつてのように、自由化を武力で弾圧できる状況ではなくなっており、そうしようとすれば、ロシアが参加している国際的な活動を放棄しなければなりません。

 グルジア紛争から分かるのは、平和をもたらすのは、やはり平和的な活動だということです。ヨーロッパ諸国がグルジア紛争の調停に乗り出さなければ、グルジアはロシアの手に落ちたでしょう。敗者のグルジアが単独でロシアと交渉しても、一方的に不利な条件を突きつけられるだけです。現代には、国際的な赤十字社の機構、国連、OSCEなどがあるから、このような調停が可能なのです。軍事活動は、避けられない緊急時に対応するための組織であり、そのために使う時だけ価値があると考えるべきなのです。しかし、平和のための活動も、軍事知識なしに行えば失敗します。調停に集まったメンバーが軍事を知らなければ、ロシアに都合のよい停戦条件にしかできなかったでしょう。平和を達成するために軍事知識を利用することが、現代においては重要なのです。


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