ロシア軍が設定した警備地域が広すぎ、停戦合意違反だとして問題になり始めました。
いま思えば、停戦合意の第5項に「南オセチアの境界線から最大2km」のように距離を具体的に書き込むべきでした。また、ロシア軍が警備地域を設定しはじめた段階で、関係国は直ちにそれを非難すべきでした。それが少し気になっていたので、私は22日付けの記事で下のように書きました。しかし、ロシア軍が広すぎる警備地域を設定しはじめても、特に批判する声明がなかったので、各国はこれで合意しているのかも知れないと思いました。これは、私の判断ミスです。
停戦合意では、南オセチアの近接地域がどこなのかを具体的には記していません。これについては、ロシアにその判断が任されているわけです。当然、ロシアはできるだけ多くの警備地域を設定しようとします。
サルコジ大統領が「南オセチアの近接地域だけ(only the immediate vicinity of South Ossetia)」と書き加えたのは、不十分だったのです。これは痛恨の失敗になりそうです。
□停戦合意の第5項□
ロシア軍が南オセチアで始まった敵対行動以前にいた位置へ退却すること。ロシア人の平和維持軍が国際的な監視メカニズムが到着するまで付加的な保安手段を実行すること。(サルコジ)こうした措置は南オセチアの近接地域だけに影響を与え、グルジアの全領域には及ばない。
Russian armed forces to withdraw to the positions held before hostilities began in South Ossetia. Russian peacekeepers to implement additional security measures until an international monitoring mechanism is in place. Sarkozy: These measures affect only the immediate vicinity of South Ossetia and in no instance the entire territory of Georgia.
ロシア軍はアブハジアにも同様の警備地域を設けていると報じられています。すでに、ここで紹介しているように、この境界線はイングリ川(Inguri)の水力発電所を含む、川沿いのラインです。ダムの上流地域は巨大な湖で、ここには大軍を配置する必要がなく、防御には適しています。停戦合意は明らかに南オセチアだけに限定した合意ですから、ロシア軍はアブハジアに警備地域を設けることはできません。これは明白な停戦合意違反です。
今回のことで分かるのは、ロシア軍は未だに拡張主義であり、そのために、国家間の紛争を防ぐという国連の崇高な使命を利用して恥じないということです。私はロシアがもう少しは遠慮するかと考えていましたが、こうした考えは見当違いだったと悟りました。しかし、そうと分かれば、今後の展開は読みやすくなります。
今後、ロシアは関係国から何を言われようと「停戦合意違反はない」と繰り返して、批判を突っぱね続け、次の機会をじっくりと待つことになります。この状況のまま、NATO軍がロシア軍とグルジアで対峙することを望むわけがないと踏んでいるのです。