民間人誤爆の原因は虚偽情報か?

2008.8.30



 military.comによると、22日にアフガニスタン西部のアジザバッド(Azizabad)で起きた、90人が死亡した誤爆事故は、ライバルの部族が流した情報に米軍が欺かれた結果で起こりました。一方、この報告を疑問視する声もあります。

 米軍とアフガン軍は、8ヶ月前にライバル部族によって殺害された指導者チモール・シャー(Timor Shah)を追悼するために、大勢の人が大きな建物に集まった村を攻撃しました。この攻撃は、シャーのライバルであるネーダー・タワカル(Nader Tawakal)が提供した誤った情報に基づいていました。タワカルの所在は目下不明です。

 NATO高官によれば、攻撃は、アパッチ攻撃ヘリコプター、AC-130ガンシップ、無人攻撃機プレデターによって行われ、この攻撃により15軒の家が破壊、または損傷しました。ほぼ同じ損害がアフガン高官によって確認されています。現地に入った兵士は、30体の遺体(25体の武装勢力、5体の民間人)を確認し、攻撃目標の武装勢力ムラード・シディック(Mullad Siddiq)の死体が確認されました。アフガンの独立人権委員会の長アーマド・ネーダー・ナデリー(Ahmad Nader Nadery)は、調査員が91人の遺体(子供59体、女性19体、男性13体)を確認し、武装勢力はいなかったと主張します。この内76人は、シャーの兄弟レザ(Reza)を含む同じ一族のメンバーで、 レザはシンドダンド空港(Shindand airport)の近くで米軍と共に行動する民間軍事会社を持っていたため、タリバンのメンバーとは考えられません。複数のアフガン高官は、76体の遺体がモスクの床に並べられているのを確認しました。翌日、遺体はさらに増え、遺体には頭部や手がないものがありました。高官は遺体の詳細なリストを入手しました。遺体はアフガンの情報機関により撮影されましたが、同機関の広報官は映像の存在を否定も肯定もしておらず、公開する可能性も否定しました。

 記事は、民間人の死傷は虚偽である可能性を指摘しています。アフガン政府と米軍は攻撃の犠牲者に慶弔見舞金を出しており、それを目当てに虚偽の方向が行われる場合があるためです。しかし、記事を読む限り、犠牲が出たことは否定できそうにありません。ライバルが人が大勢集まるところを、米軍に狙わせたと見るのが妥当でしょう。米軍が確認した武装勢力の遺体は、顔立ちが似た人を誤認したものかもしれません。おそらく、DNA鑑定のような科学的な実証方法は使っていないでしょう。本人のサンプルがないと、DNAの比較はできません。また、アフガン政府が証拠を提示しないのは、米軍の体面を考慮してのことだと思われます。

 これは、アフリカのソマリアでも起きたことです。当時、米軍はアイディード将軍を逮捕しようとしていました。部族長たちは米軍に抵抗する将軍を説得するために会合を持ちました。米軍はここに将軍が来るという偽情報を真に受け、攻撃ヘリを差し向けて、アメリカに協力しようとしていた部族長のほとんどを殺害したのです。当然、ソマリアの世論は米軍から離れ、有名な「ブラックホーク・ダウン」事件を生んだのです。対テロ戦でも、こうした事件が起こっています。「歴史は繰り返す」のたとえ通り、同じ失敗が繰り返されています。こうした誤りを防ぐには、注意するしかありません。いまや、ロシアがこうした失敗を批判の材料にする時代なのです。

 本日は時間がないので、ここまでにします。余裕があれば、記事を追加するかも知れません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.