military.comによれば、ロシアのウラジミール・プーチン首相が、グルジア紛争はアメリカが企てたという見解を、CNNのインタビューで披露しました。
プーチン首相は、ロシア国防省の高官が、この戦争がアメリカの大統領候補者1人のために引き起こされたと、彼に述べたと主張しました。首相は、米軍の軍事顧問を批判し、グルジア兵が南オセチアの奪還を企て、その過程でロシア人を殺害したと述べました。「アメリカ市民が敵対行動の間に戦闘地域に間違いなくいた事実がある。彼らが上官の命令に従ってそうしたに違いない。彼らはそうした命令を実行するために行動した。命令があったからやったのだ。そして、こうした命令を彼らに与えられるのは、彼らの上官だけだ」。プーチン首相はオバマとマケインのどちらの大統領候補かは述べませんでしたが、明らかに共和党候補のマケインを指していると思われます。
これには正直なところ驚きました。これまで計算ずくで戦争指導をしてきたと思ってきたプーチン首相が、本気でアメリカ謀略説を信じているように思えたからです。これまでのロシアの発言は、戦略的に意味のある内容でしたが、この発言は意図が分かりません。この発言でアメリカを追いつめることはできませんし、信じる人がどれだけいるかという疑問が湧くからです。言葉も変に理屈っぽく、理性を欠いているように感じられます。ロシア軍がグルジア軍の行動に対して、直ちに大軍で応酬したことを考えると、相当前から侵攻計画を立てていたはずです。プーチン首相はそれらを忘れて、すべてはアメリカの仕業だと信じ込んでいるのでしょうか。そうでなくても、紛争後に湧き起こった国際的な批判によるストレスが、一時的にちょっと変になっているだけなのでしょうか。
これが本当に、防衛官僚から聞かされた話なら、何か目的があって行われたように思えます。プーチン首相が喜びそうな話をしただけなのか、彼に失敗させたいという意図があったのか。あるいは、紛争をさらに激化させたいのかも知れません。いずれにしても、その目的は分かりません。また、それを真に受けるプーチン首相の精神の健全さを疑います。彼はすでに自分が仕掛けた謀略に自らはまり込み、混乱しているのかも知れません。こういう状態で、何か謀略が行われると、紛争は一気に再燃することになります。だから、国家指導者には精神が健康でいてもらう必要があります。
というわけで、今回のプーチン首相の発言は非常に気になります。彼の言動には注意を続けていきます。
他に、NATOが、国会の海軍力を増強しているというロシアの批判を否定する報道があります。ロシアは、アメリカ、スペイン、ドイツ、ポーランドが4隻の艦艇を派遣したことを批判しています。
スペイン、ドイツ、ポーランドのフリゲート3隻が8月21日に黒海に入り、米海軍のテイラー(USS Taylor)と合流しました。NATOの広報官カーメン・ロメロ(Carmen Romero)は、これらの乗り入れは、黒海西岸(ルーマニアとブルガリアの沿岸)で行われる定期的な演習のためであり、国会への海軍艦船の乗り入れを制限する、1936年に制定されたモントルー条約(Montreux Convention)に従い、6月には海峡航行の申請をしていたと主張しました。また、協定に従って、21日間を越えて留まることはないと述べました。これらの艦艇は、グルジアから900km離れたルーマニアのコンスタンタ港(Constanta)にいます。
ロシアが神経過敏になっている様子が窺えます。黒海艦隊の戦力にあまり自信が持てない上に、他から援軍を回すのは、艦艇の余裕と黒海に着く時間的な問題から、簡単ではないからです。だから、NATO.が少しでも動きを見せると、すぐに反応します。しかし、先の記事の中に紹介されている統合幕僚議長マイク・マレン海軍大将(Admiral Mike Mullen)のコメントを見る限り、アメリカは偶発的な交戦が起こることを心配しているようです。黒海で直ちに海軍同士の対決が起こることはないでしょう。