グルジア紛争に大きな変化がありました。military.comによると、サルコジ大統領とメドベージェフ大統領の4時間の会談で、ロシア軍の全面的な撤退が決まりました。
ロシア軍は10月中旬までに、南オセチアとアブハジアの外側にいるロシア軍を撤退させます。10月1日までにEUの200人の監視団を受け入れます。国際的な会議が10月15日に開催されます。これは8月12日の6項目の停戦合意と同じ内容です。しかし、ロシアは、南オセチアとアブハジアを独立国家と同等の分離独立地域とする決定は維持しました。
急にロシアが態度を軟化させた理由は明らかではありません。日本のメディアは、国際的な批判がロシアの態度を軟化させたと言いたがります。確かに、それは一理あります。こうした場合、国際的な包囲網を構築して、紛争を封じ込めるのはひとつの方法です。しかし、ロシアのような国が、そうした圧力に直ちに従うとは思えません。そこで最初に考えられるのは、投資家が資金をロシアから引き揚げるなどした経済的な状況の変化です。しかし、これもすべてだとは思えません。一番大きいのは、これ以上、西欧諸国との対立を激化するのは得策ではないという判断でしょう。これまで何度か指摘してきたように、ロシアの強硬な姿勢には、不安が見え隠れしていました。もし、対立が激化して、NATOが地上軍をグルジアに投入しようとした場合、ロシアの黒海艦隊が防戦できるかどうかは、興味深い問題でした。黒海艦隊はかなり厳しい状況下にあり、NATOが本気で艦船を黒海に乗り入れれば、戦闘は厳しいことになったでしょう。その後、地上軍が空母の支援の下でグルジアに入ることになります。こうした作戦は考えるほどに無益に思えてきます。いま、この地域に戦力を集中することは、対テロ戦も抱えていることを考えると、何の得にもならないからです。
妥協することで、不利が大きくなりすぎるのなら、ロシアもそうしようとは考えません。グルジアは南オセチアとアブハジアの独立は認めないという態度を続けています。この状態で、グルジアがNATOに参加したら、ロシアは侵攻の意義を失います。今回の合意には、グルジアのNATO参加について、何の記述もありません。それは来月開催される会議の議題になるのでしょう。
OSCEという言葉が消えて、EUの監視団を認めるという表現に変わったのは、正直なところ驚きです。いずれにしても、監視団はNATO軍の士官が中心です。グルジアのNATO参加を既成事実化することになるので、ロシアはこれを絶対に認めないとしていました。EUもそういうロシアをなだめるためにOSCEの名前を使いました。それが今回の合意ではあっさりと認められてしまいました。しかし、だからと言って、ロシアがグルジアのNATO参加を認めたかどうかは分かりません。今回の合意で一番気にかかるのはこの点です。別の記事によると、ロシアは南オセチアとアブハジアに7,600人の兵士を配置すると発表しました。これは紛争前よりも遙かに多い数です。ロシアは、これを一歩前進と受け止めて、納得しているのかも知れません。
それから、イラク米軍施設での感電死事故が広がりを見せています。8件の類似事故が再調査されることになりました。(記事はこちら)