military.comによると、ロシア軍が停戦協定に従って退却を開始しました。南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の外側にいたロシア軍は、南オセチアとアブハジアの内部へと退却したのです。
しかし、ここに来て、重大な要件でまた対立が起きています。南オセチアとアブハジアに残る7,600人のロシア兵は、8月7日に発生した紛争前の位置へ戻るという停戦合意に違反する、と西側諸国は主張しています。毎日新聞の記事によると、南オセチアとアブハジアの中にも停戦監視団が配置されるというEUの主張をロシアは否定しています。ロシアは、停戦監視団の活動区域は両地域の周縁部にロシアが設置した「緩衝地帯」限られると主張しています。サルコジ大統領とメドベージェフ大統領の交渉の席では取り決められなかったと記事は書いています。
ロシア兵7,600人が両地域へ残るのは、合意事項ではなかったようです。「紛争開始前の位置」という停戦合意の文章には、曖昧さを感じていましたが、私はサルコジ大統領とメドベージェフ大統領の間で細目が取り決められているものと決め込んでいました。どうも、そんなものはなかったようです。
私が読んだ記事では、監視団の活動地域は南オセチアについてのみ認められていました。だから、アブハジアについて記述がないのは変だと思いました。しかし、実際には両地域について取り決めは存在しないようです。
報道が誤っていたのか、サルコジ大統領の楽観的な観測をそのまま報じたのか、原因は分かりませんが、グルジア紛争については停戦交渉の不備が多すぎます。こうした対立が多い問題では、明文化しない事柄を当事者があえて守るはずはないと考えなくてはなりません。最初の停戦交渉で、そのことは分かっていたはずです。また同じ誤りを繰り返したことで、サルコジ大統領の外交能力は、当初よりもぐっと評価を下げなければいけないと感じました。案外、「見かけ倒し」なのかも知れません。