パキスタンで米軍が地元民から攻撃を受ける

2008.9.16



 military.comによると、パキスタン軍と地元民が、パキスタン領内に入った米軍のヘリコプターに発砲しました。

 匿名を希望する地元の治安高官によると、アフガニスタン国境付近のトライバルエリアで、パキスタン軍が20人のタリバン戦士を殺害した時、2機の米軍ヘリコプターが夜明け前にパキスタン領内に入り、南ワジキスタンのアンゴル・アダ(Angor Adda)に着陸しようとしました。パキスタン軍と地元民がヘリコプターに発砲し、アフガンに戻させました。地元民によると、9月3日、米軍が民間人20人を空爆で死亡させたので、アンゴル・アダの地元民は警戒をしていました。

 米軍の言い分は少し違っています。武装ヘリコプターに支援された兵士がパキスタン国境を越えようとしたところ、地元民によって追い返されたが、パキスタン軍の関与はなかったと、匿名を希望する米軍高官は主張します。ムラド・カーン中佐(Major Murad Khan)は、現場で発砲音があったことを認めましたが、どこで起こり、どこを狙ったものかは確認されていないといいます。

 まだ暗いうちに起きた事件なので、双方の言い分が違うのは当然です。これらの情報から何が起きたのかを正確に言い当てることはできませんが、米軍が地元民によって追い返されたのは間違いがありません。パキスタン軍の関与は後から付け足されたものかも知れませんが、米軍とて千里眼ではなく、確実にパキスタン軍が現場にいなかったと断言することはできません。単に、現場で兵士がパキスタン軍兵士を見なかったというだけの話です。米軍兵士から見えないところにパキスタン軍兵士がいた可能性は否定できません。

 先に、パキスタン領内で、地元民から米軍が攻撃を受ける可能性を指摘しましたが、当然のように、事態はその方向に推移しています。過去の事例から見ても、これは当然の成り行きです。今後、米軍はタリバンとは関係のない地元民からの攻撃も警戒しながら活動をすることになります。パキスタン軍が地元民を守ろうとして、米軍と表立った対立を展開するかも知れません。対テロ戦の重要な部分は、パキスタンの出方次第ということです。こうした事態にならないように、作戦の全体が管理されなければならないのですが、それは大抵の場合、上手く行かないものです。

 別の記事によると、ロバート・ゲーツ国防長官が、イラクでの米軍の役割は縮小されていくと述べました。オバマ大統領候補が、パキスタンへ軍を投入すると公約したこと。米軍がすでに、その方向へ主軸を移しつつあること。今後、パキスタンのトライバルエリアが対テロ戦の中心となり、今回のような事件が多発します。それがどんな事態を起こすのかが気になります。


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