military.comによると、名誉勲章を受け取ってもおかしくない兵士が一段低い海軍十字章(Navy Cross)を授与されることで、兵士の家族が憤りを感じています。
海兵隊員のラファエル・ペラルタ3等軍曹(Sgt. Rafael Peralta)は、激しい戦闘が行われていた2004年11月15日、ファルージャで家屋の捜索を行う最中に顔と体に数発の銃弾を受けました。目撃者の海兵隊カメラマンによると、ペラルタは家の床に横たわったまま、武装勢力が投げた手榴弾をつかみ、自分の体で爆発を受け止めて即死しました。2005年に、第1海兵師団の指揮官がペラルタの遺体から銃弾の破片を回収し、出所を確定するよう命じました。その結果、ペラルタは友軍の銃撃を受けた可能性があることが確認されました。ティーンエージャーで海兵隊に入隊し、25歳で死んだペラルタを、ブッシュ大統領は戦没者追悼記念日のスピーチで称賛しました。でも、名誉勲章は与えられないことになったのです。軍は、死因の調査結果は海軍十字章の授与と関係がないと主張しています。
今年5月、対テロ戦では5番目、イラク戦では4番目の名誉勲章が授与されました。ハンヴィーの機銃手だったロス・マクギニス上等兵(Pfc. Ross McGinnis)は、手榴弾が車内に放り込まれたのを見て、とっさに手榴弾の上に覆い被さり、自分の体を犠牲にして戦友を救いました。3月には、シールズ隊員のマイケル・A・モンソール二等警衛伍長(Master-at-Arms 2nd Class Michael A. Monsoor)は、近くに投げられた手榴弾をつかみ、爆風から同僚を守って死にました。ペラルタの行為と犠牲の程度という点では、ほとんど同じです。
なぜ彼が名誉勲章をもらえないのかは、彼がメキシコ出身だからではないでしょう。おそらくは、友軍による誤射という、軍にとって「不都合な真実」があるからです。名誉勲章受勲者の戦死理由は公表され、折に触れて人目にさらされます。国防総省や陸軍、名誉勲章のウェイブサイトにも長期間または永続的に掲示されます。人びとにとって、そうした記録は何とも妙に感じられることであり、軍はそれを避けようとします。
「ブッシュ大統領がなぜ(スピーチで)息子のことを話したのかが分からない」。ペラルタの母親のこの素朴な疑問が事件を象徴しています。軍人の名誉には複雑な問題が隠れているのです。
類似する問題は他にもあります。映画「戦火の勇気」は、米陸軍協力の下で作られる予定でしたが、軍は途中で態度を変えました。それはおそらく、劇中に上官を部下が撃つシーンがあるためでしょう。完全に意図的な銃撃ではないものの、上官に反感を持つ部下が、上官が自分を撃つと勘違いして反射的に発砲してしまう筋書きでした。映画「クリムゾン・タイド」は核ミサイルの発射権限を巡り、潜水艦の中で反乱が起きるストーリーですが、米海軍はやはり協力を拒否しました。このように、軍にとって許容しがたいモラルの逸脱、特に指揮系統の混乱が描かれる映画に、米軍は自己矛盾や税金の無駄遣いという批判を恐れて、協力しません。この観点からいえば、イージス艦が現役自衛官の手引きで北朝鮮の工作員にハイジャックされる「亡国のイージス」の制作に防衛庁(当時)が協力したのはおかしなことでした。これを実現したのは当時の長官・石破茂氏でした。彼は、自著「国防」(p110〜p111)にこの経緯を書いていますから、何ら問題だとは感じていないのでしょう。