グルジア問題における中国の立場は?

2008.9.2



 グルジア紛争に関して、中国はどんな立場なのか?。この疑問について、spacewar.comが「中国はロシアを支持しないが、公言はしない」と書いています。

 中国はロシアのグルジア侵攻を受け入れがたいと考えていると、香港・嶺南大学の政治科学教授ポール・ハリス(Paul Harris)と述べています。中国もウイグルや台湾で分離主義という問題を抱えており、ロシアが南オセチアとアブハジアを独立させようとしていることを公に支持できません。国連安保理事会で、グルジア問題が評決される時、中国が棄権するかどうかは意見が分かれました。リスク・コンサルタント会社社長ボブ・ブロードフット(Bob Broadfoot)は、中国は棄権しないだろうと述べています。香港バプテストの大学の政治科学教授ジャン・ピエール・カベスタン(Jean-Pierre Cabestan)は、決議が主権の問題に集中するのなら、中国は西側諸国を支援するだろうが、ロシアを傷つけるのを恐れ、何より決議が取られることを避けようとするだろうと述べました。ハリス教授は中国が棄権すると答えました。

 分離主義者に対抗する必要上、中国がロシアのグルジア侵攻を支持することはないという点で、専門家の意見は一致していますが、安保理決議への対応に関しては、意見が分かれました。前者は理解しやすい妥当な予測です。後者は問題が微妙なので、判断は人によって違うのは当然かも知れません。中国の態度がどうであれ、安保理決議はロシアが拒否権を使って無効にするので、記録に留めるだけのための理事会になります。南コーカサスは中国にとっては、地政学的な価値は低く、自国の少数民族問題と台湾問題だけが気になると見て、間違いないということです。

 他の記事が、NATOは国連と国際法を無視し続けており、2つのグルジアの地域を承認したことで、ロシアを裁く道義的な権利はないという、ロシア外務省広報官アンドレイ・ネステレンコ(Andrei Nesterenko)の発言を報じています。

 NATOはダブルスタンダードで、国際法を選択的に解釈しているとも、ネステレンコは批判していますが、記事には、その具体例は書いていません。ダブルスタンダードならロシアもやってきたことで、いまさらという感じしかしません。しかし、グルジア問題でロシアがNATOに対して、妥協する気がないことは分かりました。武力による威嚇は、ロシアをより攻撃的にするだけです。天才的なアイデアでもなければ、グルジアのNATO参加は続行できそうになく、ロシアもまた、グルジアのNATO参加を完全に止めさせることはできません。こうした不安定な状態のまま、現状維持が続くことになります。すると、ソチ五輪がスケープゴートとして政治利用される危険性が高くなります。ですが、ロシアの本音も見えています。ロシアも、これ以上、紛争を激化させられないのです。NATOと全面的に衝突すればどうなるか、彼らも分かっています。できれば、このままグルジア問題を沈静化させたいのが本音です。この辺に、グルジア問題を解決する鍵があるような気がしています。正面からは入れなくても、裏口にネズミの巣の入り口くらいはあるはずです。

 それから、別の記事によると、アンバル州の治安権限がイラクに譲渡されました。これで18州中11州の治安権限がイラクに戻ったことになります。現在、アンバル州には28,000人の米兵がいます。イラク軍と警察は37,000人います。

 ところで、昨夜遅く、福田首相が辞任を発表しました。すでに、麻生首相の誕生が予測されています。これで自民党の支持率はまた下がるでしょうが、総裁選をきっちりと行い、無投票で代表が決まる民主党との違いを見せつけるというチャンスが、自民党にはあります。


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