空挺隊中尉の捕虜虐殺裁判が始まる

2008.9.23



 イラクで重大な捕虜虐待事件が発覚し、その裁判が始まりました。military.comによると、ケンタッキー州の第101空挺師団第327歩兵連隊第1大隊D中隊所属のマイケル・C・ビヘンナ中尉(1st Lt. Michael C. Behenna)は、イラク人の捕虜アリ・マンソール・ムハマンド(Ali Mansour Mohammed)を砂漠に連れ出し、裸にした上で彼の頭と肩を撃ち、他の兵士に焼夷手榴弾で火をつけさせました。

 ビヘンナ中尉は計画的殺人と犯行を隠蔽した罪で起訴されました。審理で証言した目撃者によると、事件が起きたのはバグダッドから北へ155マイルにあるベイジ(Beiji)の近くにある前哨作戦基地サメラール(Summerall)です。5月16日、目撃者はビヘンナ中尉が基地の近くにあるトンネルの中でムハマンドを撃つのを目撃しました。この目撃者は米軍のイラク人通訳で、審理では武装勢力の攻撃対象にならないように「ハリー」という名前で呼ばれました。審理では、イラク警察が撮影したいムハマンドの遺体のビデオが公開されました。遺体は裸のまま、大きな血だまりの中に横たわっており、彼の頭、首、肩は黒く焦げていました。

 5月5日、ビヘンナ中尉と他の兵隊たちは、武装勢力とつながっているとされていたムハマンドを自宅で拘束しました。ビヘンナ中尉はムハマンドの背中を自分のヘルメットで何度も叩きました。ムハマンドが14〜15人の武装勢力の名前を口にすると、彼に目隠しをしてサメラールへ連れて行きました。ムハマンドが釈放される日、ビヘンナ中尉は彼に「今日、俺はお前を殺すつもりだ」と言いました。ムハマンドに放火したのは、同じ部隊のハル・M・ワーナー2等軍曹(Staff Sgt. Hal M. Warner)ですが、軍事裁判にかけられるかどうかは未定です。ビヘンナ中尉には4人の弁護士がついており、無罪を主張しています。反対尋問では、事件がトンネルの中がほこりっぽい日の夕暮れに起こり、近くに照明がなかった点が追求されました。有罪判決が出た場合、ビヘンナ中尉は最高で仮釈放なしの終身刑に処せられます。

 驚いたことに、ビヘンナ中尉は1995年に起きたオクラホマシティの爆弾事件の犯人ティモシー・マクベイを有罪にした連邦検察官の息子です。起訴内容が本当なら、アメリカの正義に対する重大な疑問として批判を浴びるでしょう。

 証言の内容はかなり具体的ですが、犯行の様態が若干理解しにくいのが気になります。頭部を焼いたのは身元を隠すためでしょう。ビヘンナ中尉は通訳ハリーを連れて事件を起こしたとされていますが、彼が事件を報告しないと確信していたのでしょうか?。犯行時に関する証言がないのは、あとで事実関係を争うためかも知れませんが、少し気になります。もっと情報がないと、事件の真相は見えてきそうにありません。

 別の記事によると、2機の米軍ヘリがアフガニスタンからパキスタンのワジキスタン北部、アルワラ・マンディ地区(Alwara Mandi)へ入った時、パキスタン軍と地元民が発砲しました。ヘリコプターは反撃せず、アフガンへ戻りました。この情報は匿名の情報当局者から得られたものですが、はっきりとパキスタン情報部とは書かれていません。記事はイスラマバード発なので、パキスタン情報部から得たのだろうと想像できる程度です。米軍とパキスタン軍は事件を確認していないとしています。やや信憑性に疑問がある情報です。


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