隠れた敵を攻撃する空中炸裂兵器「XM25」

2008.9.29



 military.comによると、米軍が壁や丘、塹壕に隠れる敵をコラテラルダメージを回避しながら攻撃できる兵器を開発中です。口径25mmの携帯用空中炸裂兵器(Individual Air Burst Weapon)「XM25」は、来月までに3丁の試作品が陸軍に渡されます。

 XM25はこれまでの5.56mm小銃やグレネードランチャーよりも有効性を6倍向上させるとみられています。長さはM4とほぼ同じで、重量は21ポンド(約9.52kg)から12ポンド(約5.44kg)程度まで軽量化しました。これはM203グレネードランチャーを取り付けたM16とほぼ同じ重量です。空中炸裂弾は16〜600mの標的を狙えるようになる予定です。セミオート式で弾倉は4発入りですが、10発程度まで増やされる見込みです。反動は12番口径の散弾銃に似ています。

 空中で炸裂弾を爆発させるため、照準器に組み込まれたレーザー式距離計が目標までの距離を測定して、25mmの空中炸裂弾のヒューズにデータを送り込みます。これにより、弾は目標の上空に達した時に爆発し、周囲360度に被害を及ぼすのです。価格は約25,000ドル(約265万円)ですが、照準器を含めると30,000ドル(318万円)近くになると専門家は指摘しています。空中炸裂弾は1発約25ドル(約2,650円)です。歩兵部隊は2014年までに最初のXM25を手に入れる見込みです。

 これまでは、障害物に隠れて直接攻撃できない敵は迫撃砲で攻撃するしかありませんでしたが、XM25なら目標の上空で爆発させられるので、正確に攻撃できることになります。家屋のように天井がある障害物では効果がありませんが、塹壕や壁などでは有効な攻撃手段となるわけです。万能ではないにせよ、便利な兵器として定着しそうです。米軍のハイテク化はどんどん進みますが、高額化も進みます。これは戦争をしにくくなるという逆説的な現象を生む可能性がありますが、今のところは明確ではありません。戦争になると政府は金に糸目をつけないので、戦争そのものは減らないのが現状です。むしろ、戦争に浪費される国家予算のために、他の部門が犠牲になることの方が見えやすいのです。それでも、こうした傾向がもっと進むと、状況はまた変わってくるかも知れません。


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