military.comによれば、ソマリア沖の海賊に対処するため、米海軍の駆逐艦ハワード(USS Howard)が派遣されました。
ハワードは数千ヤードの距離から、ハイジャックされたウクライナの輸送船ファイナ号から海賊が戦車、弾薬、その他の重火器を持ち出さないように監視しています。ロシア海軍の艦艇が現場海域に向かっており、米海軍はそれまでファイナ号を監視します。
ファイナ号にはケニヤ政府が発注したロシア製T-72戦車33両、大量の弾薬、スペアパーツが積み込まれています。海賊の広報官を名乗る男アリ・ヤレ・アブドゥルカディア(Ali Yare Abdulkadir)によると、海賊は3500万ドルを要求しており、軍事行動が取られれば最悪の結果を招くと警告しています。また、身代金が支払われない場合、彼らができること、小火器を投棄すると主張しています。しかし、アブドゥルカディの言は確認できず、北東ソマリアとプンタランドの住民によると、彼は海賊の代表ではないということです。
一方、ロシアのニュースサイト「L!IF」にファイナ号の乗員からの音声電話がアップロードされました。乗員ヴィクトール・ニコルスキー(Viktor Nikolsky)と名乗る男性が本人なのかは確認されていません。ニコルスキーを名乗る男性によれば、海賊は身代金を要求しているけども、金額は知らないということです。ファイナ号はソマリアのホビョ(Hobyo)の近くに投錨し、同じくハイジャックされたらしい2隻の船が近くにあります。ホビョは南プンタランドの中部ムドッグ( Mudug)にあります。船内には35人(内21人は乗員)がおり、ほとんどは蒸し暑い一つの部屋に拘束されています。怪我人はいませんが、船長がひどい熱中症であるといいます。
国際商業会議所国際海事局の海賊情報センターによると、今年ソマリアで24回、ナイジェリアで18回の海賊事件が起きています。ウクライナ、ソマリア、ロシア、アメリカ、イギリスの五ヶ国は、船と乗員の早期解放に向けて情報を共有しています。国際的な海賊防止グループによると、別のハイジャック事件が発生しています。乗員19人が乗り込んでいるギリシャの輸送船が金曜日にアデン湾でハイジャックされました。
海賊がどこにいるかは分かっているけども、乗員や積荷の被害を恐れて、手出しができない状況です。おまけに交渉の相手もはっきりしていないことから、事件解決は長引きそうです。船内の乗員と話ができるのなら、これは重要な情報です。気になるのは、強行突入があれば弾薬を爆破すると、アブドゥルカディアが具体的な方法で脅迫しないことです。軍事攻撃に対して小火器を海中に投棄するのは、時間的にも難しく、爆破すると脅すのが効果的です。強攻策を採りたがるロシアが海軍を派遣したことを考えれば、こういう「保険」が必要です。まもなく、事件はロシアに一任されるようですから、彼らがどう処理するのかが注目されます。
2007年の海上保安庁のレポートを見る限りでは、ソマリアとナイジェリア、アデン湾での海賊事件は13%と徐々に増えています。2002年のレポートではこの地域は分類すらされていませんでした。海賊とアルカイダの関係は今のところは明らかにされておらず、特に連携した動きはありません。しかし、ソマリアでアルカイダが活動していることは確実で、今後、連携することも考えておくべきです。海賊が得た金がアルカイダに流れ、アルカイダが見返りに武力サービスを提供するといった関係ができるかも知れません。本来、アフリカは治安や衛生、農業のレベルを向上することで、動乱や飢餓を防ぎ、戦争を防止するための活動が行われなければいけない場所です。対テロ戦以降、現状が悪くなっている点が気になります。