カナダ軍が核開発に関与した兵士に補償金

2008.9.4



 military.comによると、1960年代に米英軍による原子爆弾の実験に参加するために配属された大勢の元カナダ軍兵士が補償金を受け取ることになりました。

 カナダ軍の兵士は、第2次世界大戦が終わってから1963年に国際条約で大気圏内での核爆発実験が禁止されるまで、アメリカ、オーストラリア、南太平洋での作戦に関与しました。オンタリオ州のチョークリバー原子力発電所(Chalk River)で、1952年と1958年に起きた2つの原子炉事故で、放射能で汚染された建物を清掃する、緊急の汚染除去に配属された軍人がいます。900人の元兵士とその家族は、隊員1人に対して22,000ドルの補償金をを受け取ることになります。2006年に政府が依頼した研究により、こうした実態が明らかになりました。

 チョークリバー原子力発電所は、発電のためというよりは、核開発のために作られた施設です。アメリカの核兵器に使用するプルトニウムも生産しました。

 それにしても、いまさらの感があります。2006年に実態が明らかになって、補償金が支払われるまでの期間も長すぎます。受け取る資格がありながら、すでに死亡した兵士は大勢いたはずです。この頃、強い放射線の危険性はほとんど認識されておらず、アメリカでも大勢の人が被爆したといいます。わざわざ、原爆実験を見学して被爆した人がいるというほどです。おそらく、カナダ軍の兵士も、ほとんど説明を受けずに任務を与えられたことでしょう。そして、彼らは長期間生き延びたのだから、放射線を浴びずに済んだのでしょう。こんなに時が経ってから、補償金を受け取っても何も嬉しくないでしょう。同僚に、放射線障害で死亡した人がいる場合、彼らが適切な処置を受けられず、政府からの感謝の念も受けずに死んだことに対して、怒りを感じるのではないかと思います。あまりにも遅すぎた補償です。この記事は、核開発の馬鹿馬鹿しさを、再び思い出させてくれます。


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