ガザ侵攻:まだガザ地区北部で戦闘が継続

2009.1.15



 ガザ侵攻がどこまで進展したのか、未だに確かな情報はありません。globalsecurity.orgのレポートでは、イスラエル軍は作戦は成功していると主張しています。イスラエル国防軍首席補佐官ガビ・アシュケナジ(Israel Defense Forces Chief of Staff Gabi Ashkenazi)は、イスラエル軍はハマスのインフラ、政府機関、軍事組織に損害を与えたたが、まだするべき仕事があると述べました。

 しかし、情報として欲しいのは、最前線がいまどこにあるかです。これが分からないと、双方の言い分を検証できませんし、ガザ住民がどれだけの危険にさらされているかを検討することができません。今日も軍事的な見地から戦況を考えてみます。

 イスラエル軍のウェブサイトに載ったレポートによると、14日午後、7人のイスラエル兵士が負傷しました。1人が重傷、1人が中程度の負傷、5人が軽傷でした。負傷の理由は対戦車ミサイルの攻撃で、場所はガザ地区の北部とされています。やはり場所はガザ地区北部ですが、同じ日の早い時間に、空挺旅団の隊員が自爆ベルトを身につけたテロリストを発見し、銃撃したところ、自爆ベルトが起爆したとのことです。このあとに、ガザ市内での活動に関する記述があります。ガザ市内(市内のどこかは不明)で戦闘工兵が装甲部隊と共同活動中に、住居の中から20発のロケットを発見し、近くにいた戦闘員を攻撃したとのことです。対戦車ミサイルの攻撃と自爆ベルトの戦士はガザ市よりも北にある場所で、ロケットの発見はガザ市内のどこかで起きた、と読み取れます。

 最初に投入された部隊がハマスの防衛線にくさびを打ち込み、予備役はそのあとから取りこぼした拠点をしらみつぶしにしていくのが作戦のコンセプトです。空挺部隊や装甲部隊と一緒の戦闘工兵は、最初に投入された部隊です。対戦車ミサイルで負傷した部隊が予備役かどうかは分かりませんが、記事に登場する兵士の多くが予備役ではないのは間違いがありません。以上から、何が読み取れるでしょうか。14日の段階では、予備役が戦闘に投入されたとはいえ、まだ主要な戦闘は第一陣の部隊によって行われていて、ガザ市よりも北でもまだ戦闘が続いているということです。現状では、戦闘はやや遅れ気味、それもちょっと心配になる程度の遅れといえます。予定より遅れても、ハマスを掃討できればイスラエルはよいわけです。ハマスが防戦上手で、イスラエル軍に大きな損害が出て、ガザ市全体を占領できなければ、イスラエルは全世界から敗北したとみなされるでしょう。こうした戦況を判断するために、今後、数日間の戦闘情報がとても重要になります。

 一方、ハマス側も戦闘に関する有益な情報を提供していません。14日付のレポートでは、イスラエル軍が農地に大きな被害を与えていることを批判していますが、これはジュネーブ条約追加議定書が、農業施設など、生存に必要な施設への攻撃を禁止していることを逆手にとったプロパガンダです。なぜか、イスラエル軍と戦うハマス戦士の記事はありません。

 公開情報からの戦況分析はこのように行います。今朝までの報道を見ると、どのメディアも戦況を判断できるだけの情報は報じていません。いまや紛争当事者のウェブサイトの情報から、手探りで戦況判断ができる時代なのです。

ガザ侵攻に関する重要な情報源

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