国防総省がキング牧師の誕生日を祝う

2009.1.20



 米国防総省がオバマ政権下で実現する予定の16ヶ月以内のイラク撤退に向けて走り出したことは、すでに紹介しました。military.comは、米国防総省がキング牧師の80回目の誕生日を祝った時に、ロバート・ゲーツ国防長官がアフリカ系の水兵、ベンジャミン・ドラモンド(Benjamin Drummond)について述べたことを報じています。米国防総省も新しい時代を感じているようです……まだ、ブッシュが大統領の座にいるにも関わらず。

 ドラモンドは1843年にニューヨークで生まれました。18歳で海軍に志願し、メキシコ湾においてモーニング・ライト号(USS Morning Light)の勤務に就く間に、3度銃傷を負い、敵の捕虜になりました。彼は奇跡的な脱走に成功し、1864年に再志願しました。しかし、怪我が完治せず、彼は1868年に除隊します。彼が受け取った障害年金は、銃傷1カ所について1ドル強として、毎月4ドルでした。これは白人の場合の半額でした。彼は増額のために戦い、死の直前に210ドルの一括払いを受けました。彼の妻は、その後、寡婦年金と呼ばれるようになったもののための戦いを始めました。

 ゲーツ国防長官はこう述べました。

我々国民すべてが次週の歴史的な事件を目撃する時、我々は…彼らの使命と献身が認められるずっと前に、この国を誠実に守ったベンジャミン・ドラモンドと無数の人びとを思い出すべきです。

 ゲーツ国防長官は、米軍がはじめてアフリカ系の最高司令官を迎えることへと話をつなげています。前任のドナルド・ラムズフェルドなら、こんな格調高い言葉は口にしなかったでしょう。

 オバマ次期大統領は、エイブラハム・リンカーン大統領の言葉を頻繁に引用し、就任式ではリンカーンが使った聖書に手を置いて宣誓します。南北戦争は連邦を離れて独立しようとした南部の分離主義者と北部勢力の戦いでした。工業化が進んで労働力を求めた北部は南部の奴隷を労働力として求め、奴隷解放運動を起こしました。農地から奴隷がいなくなることを恐れた南部11州は独立を宣言し、北部23州と戦争をはじめました。経済的な理由ではじまった戦争でしたが、アフリカ系の奴隷が解放された結果、平等権の問題が解決される結果を生み、いまでは、そのための戦争だったとみなされています。

 いま、オバマ氏がリンカーンを持ち出すのは、分離しかかったアメリカを一つにまとめ直すことを強調するためです。イラク戦争により、アメリカ国内にいるイスラム系米人が大変に窮屈な思いを味わっています。すでに長らく、アメリカは人種のモザイク状態にあるのに、ブッシュ政権は白人中心の社会を維持しようとしました。その白人が主導した戦争が世論を分裂させ、アメリカのよいところが帳消しになってしまいました。だから、もう一度、リンカーンを思い出そうということです。これで、アメリカ人には十分にメッセージが伝わるのです。


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