中国はオバマ演説をどう報じたか

2009.1.23



 オバマ大統領がイラク撤退を指示し、グアンタナモベイ収容所の閉鎖を命じたことは、日本でも大きく報じられているので、ここでは解説しません。しかし、就任式のスピーチを中国がどのように報じたのかは、日本人にとっても興味深いことです。sinodaily.comが中国がオバマ演説をどのように報じたかを伝えています。

前世代の人たちが、ミサイルや戦車ではなく、堅固な同盟と不変の信念によって、ファシズムと共産主義を屈服させたことを思い出してください。
(Recall that earlier generations faced down fascism and communism not just with missiles and tanks, but with sturdy alliances and enduring convictions.)

 この場面に来た時、カメラは突然、ニュースキャスターに切り替わりました。「共産主義」の部分がまずかったのでしょう。しかし、キャスターは急に画面が切り替わるとは思っておらず、ぎこちない微笑みを浮かべていました。

汚職と欺瞞、反対意見の抑圧によって権力にしがみつく者たちは、自分たちが歴史の裏側にいることを知ってください。しかし、あなたたちが握り拳を緩める意志があるのなら、我々は手を差し伸べるでしょう。
(To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history, but that we will extend a hand if you are willing to unclench your fist.)

 「人民日報」は、先の「共産主義」という単語を削除し、「反対意見」の行は完全に削除して報じました。しかし、外国人向けの中国メディア「中国日報」は全文を掲載しましたが、「反対意見の引用(dissent quote)」としてでした。どうやら、中国は「反対意見の抑圧」がチベット問題を指していると解釈したようです。

 アメリカが新時代へ向けて走り出すために大統領選挙を行っていた時、中国は「一つの中国」に向けて、オリンピック熱に浮かれていました。チベット問題は無視され、我々は極度の民族意識で固められたオリンピックを見せられることになりました。私は正直なところ、うんざりでした。開会式では、演技者の安全を無視して、彼らを高所にワイヤーで吊り上げる演技が繰り返されました。私はこうした演出が現在の中国を象徴しているように思われたのです。大国の中国が、世界の潮流から、まったく遅れており、改善する気もないことは不安材料として数えられるべきです。中国が、世界は異なる民族と文化が共存し、お互いに平和を求めていく必要があることを学び、国の性質を変えることを望みます。特に、中国はアジアからロシア、中東まで、多くの国と国境を接しています。こういう塵条件を持つ中国の体質が変わることは、世界平和に大きな影響があるのです。


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