ガザ侵攻:本格的な戦闘はこれから

2009.1.6



 毎度のことですが、ガザ侵攻に関する国内報道は非常に分かりにくく、不十分です。軍事が分からない人が通信社が配信する情報を解釈して記事を書くためか、「読んでも状況が分からない記事」ばかりです。こうした曖昧な情報を元に、日本国民がガザ紛争に関する考察を行うことは非常に危険です。

 これまでの戦況について、guardian.co.ukのインタラクティブ・マップが非常に分かりやすくまとめています。日をクリックすると、その日に起きたことが表示されるようになっており、戦況の変化を把握できます。「Day9」をクリックすると、地上部隊が侵攻した方向が表示されます。これによれば、イスラエル軍はガザ市を包囲すると同時に、南部にあるラファにも部隊を進めています。先に指摘していたように、イスラエル軍は北部からだけでなく、南部にも同時に進行するのが、作戦としては標準的です。これにより、出来るだけ早くにエジプトに通じるトンネルを封鎖できると期待できます。ガザ市はハマスの主要な防衛拠点であり、ここを包囲することも重要であるため、この二カ所が主戦場になるのはごく自然なことです。

 しかし、作戦の手法が標準的なことは、別の不安も誘発させます。標準的な方法で2006年にハマスに撃退されたのですから、同じ方法だと同じ結果を招くことになります。「そこで、どうするか」という新しいアイデアが必要になるわけです。今日には戦闘の優劣がある程度分かると昨日書きました。ハマスの防衛拠点が陥落しているという情報が出れば、イスラエル軍の戦術が功を奏したことになりますし、そうでないのなら、ハマスがイスラエル軍の地上部隊を食い止めていることになります。そうした情報の初端が出るのが、大体、開戦後2日程度というところなのです。もちろん、初期の情勢があとで変化することもありますが、大勢を見るためには最初の情報をよく理解する必要があります。military.comによると、すでにイスラエル兵5人が戦死しています。ハマスはロケット攻撃を続けています。ハマスは死傷者の数を公表していません。イスラエル軍はガザ市内には入っていない模様で、まだ外縁部分にいるようです。イスラエル軍は体制を整えてから市内に侵攻すると見えます。これはハマスの防衛線が一応成功していることを示しますから、戦闘はイスラエル軍が言うように長期化し、本格的な市街戦はこれから始まると言えます。現状は2006年の再現の前兆かも知れません。今後数日の状況に注意が必要です。当面、イスラエル軍がガザ市内に入れないようなら、ハマスに対する世界中の評価が高まり、ハマスが実質的な勝利を得ます。

 戦況は以上ですが、気になるのはガザ住民の安全です。ガザ市は人口が40万人程度もあり、最も大きな病院はすでに流血でいっぱいとのことです。イスラエル軍は型通りの警告を住民に発しただけで、その安全を積極的に確保しようとはしていません。住民の安全を守るという点で、ハマスとイスラエルの戦い方は自衛隊にとっては何の参考にもならないことも指摘しておきます。これは反面教師とすべき事柄です。

マップは右クリックで拡大できます。


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