奇妙なニュースをmilitary.comが報じました。8月31日、大陸間弾道ミサイルの部品を積んだ米空軍のトレーラーが
横転する事故があったというのです。
事故を起こしたのはノース・ダコタ州のマイノット空軍基地(Minot Air Force Base・kmzファイル)にある第94ミサイル隊のセミトレーラーです。このトレーラーには大陸間弾道弾のロケットエンジン部品と14ガロン(約53リットル)のタンクが2個積載されていましたが、爆発や漏洩の危険はなく、核物質も積んでいませんでした。トレーラーを運転していた兵士の背中に、窓から飛び込んだ大きな昆虫が飛び乗り、兵士が虫を捕ろうとしたところ、トレーラーが横滑りして、溝で転覆したのです。なお、その昆虫の種類は不明です。空軍は9月4日にトレーラーを積荷を回収しました。この基地では、2008年7月にもロケットエンジンを積んだトラックが転覆する事故を起こしています。この事故の後で、空軍はミサイルから取り外したロケットブースターを回収するのに560万ドルを費やしています。
マイノット空軍基地が「また、やってしまった」ようです。2007年9月、この基地のB-52が核爆弾を搭載したことに気がつかないまま飛行して、処分者が出ました(当時の記事はこちら)。今回は同じ転覆事故でも、窓から飛び込んだ虫が原因という、戴けない話です。私はまれに、陸自隊員がタバコを吸いながらトラックを運転しているのを見ることがあり、規律の欠如を感じることがありますが、重要な物資を運ぶトレーラーが窓を開けっ放しで走行するのはどうかと思います。しかし、この程度は米軍では問題視されないのかも知れません。
150基の弾道ミサイル・ミニットマンIIIを統括する第94ミサイル隊司令部だけでなく、B-52H爆撃機を持つ第5爆撃隊も一緒に駐屯しています。Google Earthを見れば、8機のB-52が滑走路の南端にある緊急発進用の駐機場にあるのが分かります。この基地はカナダ国境に近い場所にあり、核戦略の中心に位置します。冷戦時に、ソ連に向けて核攻撃を行う場合、北極を爆撃機やミサイルが飛び交うため、この地に作られたのです。そんな第一線の基地でもヘマをやるときはやるので、弾道ミサイルのことなど専門家に任せると考えるべきではありません。今回の事故は単なる運転方法の問題です。それが1ヶ月以上経たないと公表されないのですから、この分野にいかに秘密が多いかが分かります。
余談ですが、北朝鮮が六ヶ国協議に復帰しようとするためと、そろそろ発射施設付近の天候がロケット発射には相応しくないほど荒れてくるので、テポドン2号に関しては、少なくとも来春までは動きはないと、私は見ています。4月の発射で確認された3段機体の不良を改善するのが必要なのは、言うまでもありません(過去記事はこちら)。