新型小銃への置換は早くて2012年

2009.10.17

 military.comによると、問題が多いM4小銃に変わる、「準小型の個人用武器システム(subcompact individual weapon system)」の選定が米陸軍内部で進められています。

 兵士の兵器に関する計画管理者であるダグ・タミリオ大佐(Col. Doug Tamilio)によれば、5月に陸軍が事前評価を行い、たくさんの武器を異なるシナリオと状況でテストしました。異なる射程での正確さ、兵士が射撃中に反動を受けながらどれだけコントロールできるかが調査されました。タミリオ大佐は明かしませんでしたが、業界筋によると6社程度が射撃テストのために武器を提供しています。現在、陸軍歩兵学校(the Army Infantry School )が小銃の最終的な必要事項を作成中です。2010年度会計予算が大統領によって署名され、約1千万ドルの予算がつけば計画は開始され、順調にいくと、2012年までに兵士は新しい武器を手にすることができます。

 タミリオ大佐は「興奮している」と述べていますが、それは当然です。制式小銃の交換は滅多にあることではなく、それを手がけられるのは、努力だけでは無理なのです。兵器の技術部門にいる者なら、こういう機会に遭遇できたことを幸運に思うでしょう。端から見れば、それだけの話です。問題は2012年までには、まだ2年以上があることです。それまでは、一部の部隊を除いた歩兵部隊(陸軍、海兵共)は、M4小銃を使い続けることになります。技術屋には嬉しい話でも、歩兵にとっては「まだ、待つのかよ」という話でしかありません。

 ところで、13日に紹介した、M4小銃の欠陥が露呈したワナットの戦い(2008年7月13日)に関する論文ですが、非常に興味深い内容です(pdfファイルはこちら)。249ページもある論文なので、全文を読むのは難しいでしょうが、当日の戦闘に限って言えば、106〜167ページ(「The Attack on COP Kahler」から「Aftermath」まで)だけを読めば把握できそうです。この論文は、13日の戦闘だけでなく、ワナットの軍事的価値から米軍の戦略も含み、13日の戦闘のかなり前からの状況を含み、戦例を引用した見解までを示した包括的な内容で、単なる戦闘レポートではありません。記述は平易ですが、無人偵察機の情報の利用状況まで書いています。さらに、用語についても解説があります。一般的に使われているワナット(Wanat)という地名は、正確には「ワント(Want)または(Wantt)」であり、この土地がある「ウェイガル峡谷(Waigal Valley)」は「Waygal Valley」と綴るのが正確だと書かれています。しかし、混乱を防ぐために、この論文は米軍の書類やマスコミが用いている通称の方を採用しています。

 この種の文書は専門用語が多いので、その方面に明るくない方には読みにくいかも知れません。たとえば、「HESCO」は軍で使われる巨大な土嚢(どのう)です。重機で中に土砂を入れ、前哨基地の周囲などに並べて使います。また、一緒に紹介した陸軍の報告書(pdfファイルはこちら)に書かれている「15-6 investigation」とは、米陸軍の軍規(Army Regulation)、「AR 15-6」に定義される調査が行われたことを示しています。(「AR 15-6」のpdfファイルはこちら


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.