アルカイダの大幹部は二度死ぬ

2009.10.26

 少し古いのですが、面白い記事があったので紹介します。The Long War Journalによると、パキスタンの北ワジリスタンで、アルカイダの財務官でナンバー3とされるアブ・ムスタファ・アル・ヤジド(Abu Mustafa al-Yazid)ほか2名のアルカイダ幹部が死亡しました。ヤジドの死が報告されるのは、これで二度目です。

 当初、ヤジドは無人攻撃機プレデターの空爆によって、ミア・アリ(Mir Ali)の近くのスパラガ(Spalaga)で死亡したと報告されました。パキスタン当局者は後に、住居の内部で起きた爆発が死因だと発表しました。しかし、ヤジドは2008年夏にパキスタンの陸軍との戦いで死亡したとされましたが、同年の10月4日以降、宣伝ビデオに登場するようになり、生存が確認されました。しかし、The Long War Journalは米軍がパキスタン領域内で攻撃を行ったことを確認しました。米高官筋は、パキスタンが爆発を主張するのは、米軍がパキスタン領内で攻撃を行ったことを否定するためだとしています。一緒に、アルカイダの爆弾の専門家で教官でもある幹部のアブ・ムサ・アル・ミスリ(Abu Musa al Misri、またはAbu Musa al Masri)も一緒に死亡したとされます。アルカイダはヤジドの死を公表していませんし、パキスタンの軍と情報機関も証拠を公表していません。The Long War Journalは、ヤジドの死について強い疑義を持っています。

 とりあえず、米軍が無人攻撃機で空爆を行い、アルカイダの幹部を殺害したのは間違いないでしょう。パキスタンでは北ワジリスタンでアメリカの要請による掃討作戦を行っており、これが同国内で反感を招き、連日抗議のデモが起きています。だから、パキスタンとしては米軍の空爆が自国領内であったことを認められないのでしょう。しかし、米軍も現地に入ってヤジドの遺体を回収し、本人かどうかを特定することはできません。それができるのはパキスタン軍です。そして、米側は回収した遺体の外観、指紋、DNAなどを調査します。指紋やDNAのサンプルを入手していれば、それで本人確認ができるでしょう。しかし、再びヤジドが宣伝ビデオに登場すれば、また殺し損ねたことが分かります。

 要するに、米軍は通信傍受などからヤジドがいる場所を特定し、無人機によって似た人物がいるのを確認し、その場所を攻撃し、対象者を殺害するのに成功したのです。しかし、本当に本人を殺したのかは、まだ確認できていません。 有料チャンネル「ディスカバリーチャンネル」で放送している「フューチャーウェポン」で無人偵察・攻撃機を紹介した時の説明では、無人機は上空から何でも見通せるかのような説明をしていました。しかし、実際にはこの程度の能力しかありません。カタログ性能と実戦での性能は、物によって大きな差があることを憶えておきましょう。


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