アフガン増派で机上演習を実施

2009.10.27

 ワシントン・ポストによれば、米国防総省の高官は今月、2つの主要な軍事的選択肢を評価するために、机上演習を行いました。

 この机上演習は統合参謀本部議長マイク・マレン海軍大将(Adm. Mike Mullen)が行い、44,000人の増派を行い、安定したアフガン政府を樹立する対武装勢力活動を行った場合にあり得る結果を調査しました。また、「カウンターテロリズム・プラス(counterterrorism plus)」と名づけた、アプローチの一部として10,000〜15,000人を追加したケースについても調査しました。この追加はアフガン軍を発展させる約5,000人の旅団と工兵、路傍爆弾の除去チーム、ヘリコプターなどの支援部隊が含まれますが、検討中の選択肢にはありません。この机上演習は公式にどちらのコースも支持するものではなく、むしろ、両方のシナリオに対して、タリバン、アフガンとパキスタン両政府、NATO諸国がどう反応するかを調査しました。

 この記事には、スタンリー・マクリスタル大将が提唱しているのは80,000人の増派で、これは検討されていない案だといいます。オバマ政権はシチュエーションルームで5回、総計15時間の討議を終えていますが、まだ結論には至っていません。予想されているのは10,000〜40,000人の間での増派です。最近、NATOが増派を検討しだしたのは、マクリスタル大将が求める80,000人に足りない分を補おうとしているのかも知れません。もし、本当に80,000人が必要なら、40,000人の増派では話にならないと考えるのが軍事の常識です。オバマ政権が要求の半分以下で十分と考えた理由が知りたいところです。また、国防総省が追加の増派を含むシナリオを検討しているところから、マクリスタル大将ができるだけ多くの兵士を欲しがっていることも窺えます。military.comによると、退役したデビッド・ブルノ将軍(David Barno)は下院軍事委員会・監視調査小委員会(the HASC Oversight and Investigations Subcommittee)で、100,000人を増派すべきだと証言しています。

 机上演習は正規軍同士の戦闘を検討するには最善の方法ですが、ゲリラ戦となると不確定要素が多すぎて、結論をあてにすることはできません。正規軍同士の戦闘に関しては十分すぎるデータがあり、それを演習に盛り込むことができます。ところが、ゲリラ戦にはまだ分からないことが沢山あります。もし、それが分かっているのなら、米軍は計画的にタリバンを掃討していくでしょう。分からないから、目標すら不明確な中で戦いを続けているわけです。 だから、今回の演習の目的は政治的な動きを中心に検討したのだろうと想像します。それが大統領を説得するための材料集めなのか、純粋な戦術・戦略の検討だったのかは不明です。しかし、この演習が米軍の成果につながるかといえば、目に見えた効果はないでしょう。

 注意 この記事から、これまで「ミューレン」と表記していたのを、メディアが用いる表記に合わせて「マレン」に統合します。マレン大将の名前が報道記事に出ることが増えたので、その方が読者が混乱しないと思います。過去の記事についても、すでに修正済みです。

 それから、昨日紹介した米説明責任局が公表したというグアム移転計画に関する調査報告書ですが、さらに新しい14日付けのバージョンが見つかりました。「GAO-10-72: DOD Needs to Provide Updated Labor Requirements to Help Guam Adequately Develop Its Labor Force for the Military Buildup」(pdfファイルはこちら)です。これには移転費用は130億ドルと書かれており、150億ドルと書いた記事とは違いがあります。記事で取り上げられた報告書はおそらく、これよりもさらに新しいバージョンだと思われますが、参考になりそうです。


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