護衛艦「くらま」衝突事故 さらなる疑問
29日になって、やっと重要な情報が出てきたという感じです。カリナ・スター号が衝突の直前に追い越しとは思えない急旋回をしていたことが、海上保安庁の調査で明らかになりました。
これは6ノットで航行する前方の貨物船が右に進行した時に減速してカリナ・スター号と接触する危険が出たため、カリナ・スター号が緊急回避行動をとったためと、海保が推測していると報じられています。この動作は、下手をすればカリナ・スター号が橋の支柱に接触し、別の大惨事を起こす危険もあったと、私は考えます。
しかし、カリナ・スター号の操船ミスだったと断定するには、まだ情報が足りません。貨物船が「右に寄るので、左舷を追い越させて欲しい」という要求が妥当だったのか、それを承認した管制官の判断が妥当だったのかが残る疑問となります。常識的に考えても、船が進路を変えれば速度が落ちることは明白でした。カリナ・スター号のやや左前方にいた貨物船が右に寄れば、貨物船にカリナ・スター号が追突する危険がありました。それを管制官はどう考えていたのかが問題です。つまり、管制官は貨物船の要請を却下して、カリナ・スター号に貨物船の右舷側を追い越させるべきだったのでは、という疑問が出てくるのです。これを検討するには、管制官と各船舶間の通信の内容とGPSデータが必要です。
「くらま」側には航行に関して反省すべき点はないかも知れません。しかし、観閲式の準備のために用意したペンキに引火して被害をより多くした点は問題とすべきです。水上艦で火災は最も注意すべき災害です。昨年5月22日に起きた、米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンの火災は、喫煙禁止区域でタバコを吸った隊員の火の不始末が原因と推測されています。監視カメラの映像を見ると、「くらま」は衝突直後に大規模な爆発を起こし、その後、激しく燃え続けたことが分かります。ペンキ缶が爆発すると、まず一部が吹き飛び、爆風が残りのペンキを周囲にまき散らします。次の瞬間に、拡散したペンキに炎がさらに引火するわけですから、一気に燃え広がることになります。これが被害を拡大しました。出航する前に塗装をすべて終え、ペンキを船から降ろして観閲式に向かってもよかったのではないかと考えます。また、消防艇の助けなしに、「くらま」が自力で火災を鎮火できたかどうかを検討するのは、この艦の戦闘能力を推測する上で興味深いことです。さらに詳しい情報が出てくると、それが推定できるかも知れません。単に責任の所在を考えるだけでなく、この事故からは様々な問題が読み取れます。
それから、関門海峡海上交通センターのウェブサイトを紹介しておきます。同様の施設は全国各地にあり、こうした海運の要所に関する事柄を調べるときに活用できます。
昨夜は 掃海艇「みやじま」と漁船「長栄丸」が衝突する事件が起こりました。事故は続くものとは言いますが、驚かされます。
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