戦力比はアフガンで効果を発揮しない
military.comによれば、アフガニスタンに駐留する国際部隊の兵数はすでに104,000人以上(米軍68,000人を含む)、アフガン軍・警察は200,000人(同数の警察に支援されたアフガン軍94,000人)で、25,000人を超えないと推定されるタリバンに対して「12-1」の兵力比を維持しています。
このアドバンテージがあっても、勝利にはちっとも近づかないと記事は書いています。セルビア出身の軍事アナリストでゲリラ戦の専門家リュボミール・ストジャディノヴィック(Ljubomir Stojadinovic)は、マクリスタル大将が要請している数万人の増派はこの兵力比を「20-1」か、それ以上にするものの、非生産的だと分かるだろうと言います。外国の軍隊をさらに投入することで主導権を再獲得するのは不可能です。それは憤懣を増し、敵兵をより集めるだけでしょう。ソ連は1980年代にまったく同じことを試みて、結果は悲惨でした」。
一方、NATO広報官のジェームズ・アパスレイ(James Appathurai)は、アメリカはソ連の失敗に学び、マクリスタルの指導で、NATOはますます高圧的な戦術を放棄していると言います。「この戦いの結末は軍事的手段だけでは解決されません。この観点では、タリバン戦士の正確な数は問題ではありません」。
記事は「12-1」の比率は、友軍の3分の2が訓練の足りないアフガン兵だから、正確な比率は「4-1」か「5-1」かも知れないと書いています。歴史的にゲリラ戦では、治安部隊は少なくとも「3-1」の優位を持っていました。1968年のベトナム戦争時、120万人の米軍と北ベトナム軍の比率は「4-1」。1945〜54年のインドシナ戦争では、フランス軍はベトナム軍よりも僅かに有利な40万人。1999〜2000年のチェチェン紛争では、ロシア軍は「4-1」の優位を保ちました。NATOと米軍の当局者はタリバンの兵数に関して、反自治的な派閥に別れ、アフガンとパキスタンを行き来しているので、当て推量になると主張して語りたがりませんでした。しかし、ブリュッセルのNATO本部の高官たちは、アフガニスタンで対決している敵兵数について正確な見積もりを持っていると述べています。それによれば、タリバンは20,000の戦士と、数千の補助員(部族の武装勢力、一族、犯罪者)を持っています。最近のアメリカの見積もりでは25,000人でした。
イギリス軍は、1970年代にアイルランド共和国軍の組織が大きかったときは比較的容易にゲリラを見つけられたのに、同軍が4人単位の部隊に再編成した途端に見つけにくくなった経験を持ちます。一部のアナリストは、タリバンを屈服させるには検討されているよりもずっと多い兵数が必要だと主張しています。2007〜2008年の増派を監督するのを助けたピーター・マンソール退役大佐(Army Col. Peter Mansoor)は、「友軍と敵の比率は、実際に敵を攻撃できる時にだけ決定的な局面を呈するでしょう。このケースの決定的な局面は治安部隊と人口の比率です。これはずっと適切です。それには人口50人あたり治安要員1人を必要とします。約3千2百万人の国では、治安を安定させるには600,000人が必要でしょう」
これはとてもよい記事です。時々、ハイテク装備の強力な軍隊なら、装備の貧弱なゲリラを吹き飛ばせると信じる人を見かけます。いくら強力な兵器でも、敵がどこにいるか分からなければ役に立たないということを、この人たちは理解できないのです。マンソール大佐が言うとおり、敵を攻撃できる環境でなら、敵と友軍の比率は重要な要素です。通常、この比率が「3-1」よりも低くならないように指揮官は計画するものです。歩兵の場合は、戦闘を行う兵士の人数で考えます。これに榴弾砲や航空機などの支援火力を加味して、歩兵の戦闘力を見積もります。戦車や装甲車は性能によって、歩兵の数倍の戦力を持っているとみなし、総合的な戦力を見積もるのです。さらに、地形がもたらす防御効果も加味します。しかし、ゲリラ戦はゲリラが戦う場所を選び、攻撃しては逃走することを繰り返すため、こうした計算が成り立たないのです。「12-1」という戦力比は、通常の戦闘でなら圧倒的優勢を意味します。
イラクもアフガニスタンの人口に近い約3千万人です。2003年にアメリカがイラク侵攻を計画した時、当時の米陸軍参謀長であったエリック・シンセキ大将は、「何十万人もの大人数の兵士(something in the order of several hundred thousand soldiers)」が必要だと議会で証言し、ラムズフェルド国防長官と対立しましたが、この数字はイラクの人口を考慮したものかも知れません。「several」という語は、英々辞書にあたると、「2〜3以上だけど大きくはない数」と定義されています。「4〜5」、いくら大きくても「6」程度までの数字と見るべきでしょう。事実、ダグラス・マクレガー大佐がテレビのドキュメンタリー番組で述べたところでは、シンセキ大将は少なくとも56万人が必要だと主張していました。この数字も、人口と兵数の比率から算出されたのではないかと言えるわけです。
これまで、このサイトでは、オバマ大統領がアフガンへの増派を派遣しても、結果はほとんど変わらないと主張していますが、この記事は私のこの主張を裏づけています。
ところで、かつてイラクで占領軍の総指揮官を務めたジョージ・ケーシー大将はボスにまったく反論せず、いまでは批判の対象です。私は何度もケーシー大将の言動に苛立ちを感じたものです。
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