military.comによれば、バラック・オバマ大統領は、アフガニスタン政府の治安能力の向上に対する懸念として、変化がなければ、アフガン戦役のオプションをどれも受け入れないだろうと、匿名の政権高官が語りました。
アフガン大使カール・アイケンベリー(Karl Eikenberry)は、アフガンに米軍のプレゼンスを増加することは、この国がよりアメリカに依存するようになると懸念しており、オバマ大統領の意向は、大使の発言の後に明らかになりました。ヒラリー・クリントン国務長官は、アフガン政府の汚職、透明度の欠如、程度が低い統治、法による支配の欠如について懸念していると述べました。水曜日の会議では、オバマ大統領は国家安全保障チームが提出した案のどれにも満足していませんでした。大統領は30,000人かそれ以上の米兵を、アフガンの主要な地域を確保し、アフガン軍が増強され、整備される時間を稼ぐオプションを検討しています。その他の3つのオプションは、比較的少数の増派からマクリスタル大将が推奨した約40,000人までの範囲が検討されています。軍当局者によると、30,000人派遣の場合、陸軍3個旅団と海兵隊の分遣隊で構成され、7,000人を擁する新しい作戦司令部を加えたものになります。
この記事には以前から言われていたことも書かれており、それらは省略します。今回、検討されている増派兵数が明らかになり、検討の中身も少し明らかになりました。
アメリカの大統領は過去に、軍が要請すれば基本的に増派を承認してきました。専門家の見解には大統領も従ってきたわけです。しかし、オバマ大統領はそうした慣習にとらわれる気はないようです。増派する兵数を大統領が減らすことについては、議会筋からの批判が懸念されると前に書きました。「兵数が少ないから負けた」「戦いでは勝ったが、政治が戦争に負けた」という理屈は、過去に欧米社会でよく聞かれたセリフです。こうした言い分は戦争で負けると必ず出てくるものです。増派しようがしまいが、アフガン戦が劣勢になるのは避けられず、来春には米軍はタリバンの攻勢を受けることになるはずです。イラクと同じように、いずれ米軍はアフガンでも出口戦略を模索しているため、オバマ大統領の判断ミスが敗北を招いたという批判が出る可能性は十分にあります。しかし、この敗北はブッシュ政権が招いたのです。詰めまで検討しないで始めた戦争のため、イラク侵攻という「寄り道」を行い、ここで生まれた問題をそのまま引きずってアフガンにも派兵しました。国連やEUまでが、ブッシュ政権に引きずられ、アフガンに踏み込んでいったのです。この結果、アルカイダの殲滅という目標が、タリバンとの泥沼の戦いへと転じ、目標達成のためではない任務に各国の軍隊は忙殺・消耗されることになったのです。驚くべきことは、すでに長期の戦争となっているのに、誰もこのことを指摘し、軍事ドクトリンの変更を主張しないことです。オバマ大統領の決断は、戦争目標を達成するために行われるのではなく、アフガンから脱出するための準備であることを忘れてはなりません。よって、大統領の決断が誤っていたから負けたという批判は筋違いです。そして、アルカイダ撲滅という目標がすでに達成しがたい状況に来ていること、アフガン政府内の汚職の撲滅で手一杯であることを自覚すべきです。現在の対テロ戦争は「21世紀の新しい戦争」ではなく、「植民地解放戦争の変則バージョン」です。こういう戦争は、今回で最後となるべきで、そのための政治ムーブメントが起きるべきです。オバマ大統領もまだそこまで到達していません。