「ロング・ウォー・ジャーナル」によれば、タリバンと戦うことに同意したパキスタンのバジョール州(Bajaur)の部族指導者マリク・シーア・ザマン(Malik Shir Zaman)がタリバンによって殺害されました。一方、ペシャワール州(Peshawar)の反タリバン指導者は暗殺を逃れました。
ザマンは部族の民兵組織ラシュカーをあげてタリバンと戦うことでパキスタン政府と同意していました。タリバンはザマンの家を襲撃し、一部を破壊しました。ザマンは銃撃戦によって殺害されました。ザマンは、タリバンとバジョール州のタリバンの指導者ファキア・モハメッド(Faqir Mohammed)の拠点である、マモンド部族地域(the Mamond tribal area)の出身です。パキスタン軍はこの地域で軍事作戦を何度も行ってきましたが、タリバンを追い出すのに失敗していました。アルカイダも同地に潜伏しています。ペシャワールでは、バジッド・ケール(Bazid Khel)の市長モハマッド・ファヒム・カーン(Mohammad Fahim Khan)の自宅が襲撃されましたが、護衛が応戦してタリバン戦士3人を殺害し、残りを退散させました。カーンは何度も襲撃されていますし、タリバンはこの周辺の指導者の殺害に成功しています。
パキスタン軍は南ワジリスタン州で掃討作戦を行っていますが、そこから離れたペシャワールではテロ活動が活発に行われています。同サイトに掲載されている地図を見ても、タリバンがパキスタンの広範な範囲で活動していることが分かります(地図はこちら)。
これだけの地域で国家主権と違う別の組織、一種の政治体制であるタリバンが活動しているのです。ほとんど国家が転覆しそうになっていると言えます。ペシャワール州での暗殺事件は、タリバンの支配地域を拡大しようとする試みであり、南ワジリスタンを鎮圧したとしても、ペシャワールが新たにタリバンの支配下に落ちるという、堂々巡りの状態が続く可能性があります。おそらく、こうした事態にパキスタン政府は十分な手を打てない可能性が高いのです。大衆がタリバンを支持しているところに問題があります。その原因は、パキスタン政府の腐敗にあり、それに反発した大衆がタリバンを支持しているのです。こうした問題を軍事的手法で解決することはできません。長期にわたる改善だけが解決の鍵です。今のところ、そのための政策は打ち出された試しがありません。
地図の凡例は以下のとおりです。
Taliban control(タリバンの支配地域)
タリバンが並行した政治的統治を行い、地域の大半を有効に支配している地区、機構。これらの地域で、タリバンは頻繁にシャリア法を宣言し、法廷、徴募センター、徴税事務所を運営し、治安維持部隊を保有しています。警察と軍は存在しないか、兵舎内に閉じ込められています。タリバンはアルカイダやその他のジハードグループのためのホストキャンプをこの地域に持っています。
Contested control(支配権を争っている地域)
タリバンがいまでも地域を支配する可能性がありますが、民政が活発に対抗している地域、機構。 テロリストたちが人民が抵抗する意志を破壊しようとして、タリバンが頻繁に宗教、政治、部族の指導者を攻撃したり暗殺することは、これらの地域では最悪です。
Taliban influence(タリバンの影響力がある地域)
タリバンが存在しながら、彼らの活動がより微かな地域、機構。タリバンが宗教学校であるイスラム神学校を運営していたり、徴募と資金集めを行い、ホストキャンプやタリバンの部隊を持っているかも知れません。攻撃者は、タリバンの支配地域や支配権を争っている地域と違って、これらの地域では一般的ではありません。