armytimes.comに、10月3日にアフガニスタンのヌリスタン州、カムデッシュの前哨戦闘基地が撤退する予定日に攻撃された奇襲攻撃(8人死亡、24人負傷)について、昨年7月13日に起きたクナール州、ワナットでの戦闘に似ているという記事が載りました(ワナットの記事はこちら)。
アフガン東部には約150カ所の前哨基地と前進作戦基地があり、それらのほとんどは蹂躙されたのと同じように有人です。こうした小さな前哨から引き揚げ、街の近くに移動するマクリスタル大将の戦略により、カムデッシュには前哨基地キーティングとローレル(COPs Keating and Lowell)、観測所フリッチェ(Observation Post Fritsche)が残されていました。
専門家はこうした攻撃を防ぐ唯一の方法は、より多くの兵士と資源をアフガンに送ることだといいます。デビッド・グランジ退役准将(Brig. Gen. David Grange)は、増派しなければならないのは疑う余地がないといいます。「作戦を行えなければ、攻勢には出られません。作戦をしなければ、勝つことはありません」。ロバート・スケールズ退役准将(Maj. Gen. Robert Scales)は「戦闘前哨基地を除去する度に何が起きますか? 地形の要所の一角があらわになるか、ワナットやカムデッシュで起きた攻撃みたいなことです。兵士を増やすことだけでは不十分です。、より多くの問題を解決する物、より多くの砲兵、より多くのヘリコプター、より多くの戦術無人航空機も重要です」。マクリスタル大将は残っている前哨基地は閉鎖するとしています。150カ所の内、3カ所の前哨基地は無視できると、ISAF広報官のウェイン・シャンクス大佐(Col. Wayne Shanks)はいいます。この3カ所は国境地域の支配に何の効果も果たしていないのです。ワナットとカムデッシュ、その他の多くの防御が不可能な地形に配置され、最小限の人員しか配備されず、鉄条網の外で攻撃的作戦を行うには困難です。ワナットでは7月9日に兵士が現場に到着してから、陣地の構築や兵器の設置に忙しく、周辺のパトロールが行えていませんでした。しかし、一日中自分たちを見ている民間人がいることに気がついていました。
シンクタンク「レキシントン協会(the Lexington Institute)」のレオン・トンプソン(Loren Thompson)は、戦略的に遠隔地に分散させられた小隊〜中隊規模の小さな戦闘前哨基地は機能していないといいます。「野営地を離れられないのに、地方にプレゼンスを得てどうするのですか?。しかし、もっぱら都市に集中するならば、地方をぼとんど敵に任せることになります」。COPキーティングでの戦いはまだ陸軍が精査中ですが、状況はすでにワナットと似ているとみわれます。ワナットのCOPカーラーは、村に近い広大な開墾地にあり、北西と北東、南東と南西は、高度が10,000フィートに至る著しい隆起によって囲まれていました。ある兵士はCOPカーラーを「ボウルの底にあり、大量のサンドイッチに囲まれていた」と描写しました。
この記事を読んで、すぐに気がつくのは問題とされるカムデッシュの戦いそのものについては、あまり説明がないことです。まだ十分な情報が出てきていないのかも知れません。しかし、ワナット型の攻撃だったという認識が既に定着したようです。ここではポイントになるところだけ訳出しましたが、この後も記事にはワナットとの共通点が書かれています。
いずれも攻撃はアフガン東部のパキスタン国境付近で、小規模な戦闘前哨基地で、僅かな兵士しか配置されていません。そこをタリバンは優勢な兵数で攻め、確実に勝利を収めているわけです。タリバンが戦術を選んで、行動していることは明らかです。今後も、まだ配置されている戦闘前哨基地や観測所に同様の攻撃が行われることが予想されます。米軍の3倍以上の兵数で、事前に大量に近くに集積したRPGを使って、遠隔地の米軍を攻撃し、確実に戦果をあげるのが特徴です。こうした攻撃を行う場合、銃器だけで行われることも多いのですが、RPGを使って火力を増強している点に工夫が感じられます。銃器だけの場合、米軍兵士には弾が空を切る音しか聞こえません。発砲音は武装勢力にとっては大きな音ですが、米軍兵士にはあまり聞こえないのです。しかし、ロシア製のRPG-7は安価で、弾頭の種類が豊富で、装甲車両から歩兵までの目標に効果があります。目標に命中すると爆発し、破片で兵士を殺傷します。さらに、凄まじい音と衝撃波によって、相手を威圧できる点が有利です。これによって、米兵は釘付けとなり、反撃に転じにくくなったはずです。
トンプソン氏が指摘しているジレンマは、私が以前から指摘していることと同じです。地方に前哨基地を置けば攻撃され、都市部にまとめると地方が武装勢力の手に落ちます。米軍などの外国軍は、どう選択してもよい結果が得られないという状況に陥っており、それを自ら選択してしまった点に問題があります。しかも、こうした状況は初めてではなく、植民地解放運動の時代から、先進国が何度となく体験してきたことです。最新鋭の軍隊を送り込めば、後進国の軍隊などひともみと思い込んで失敗するのは、旧日本軍も大陸で体験したことです。過去に大きな犠牲を払いながら、まだ教訓を身につけられないのは問題です。軍事的手段が功を奏するのは、極めて限定的な局面だけで、それも多くの場合で犠牲を避けられません。グランジ准将が言う増派論は、こうした軍事行動の性質を理解しない発言に過ぎません。イラク戦とアフガン戦が、こうした失敗を繰り返す最後の実例となるべく、各国は自らの戦争文化を更新する必要があります。それによって、多くの悲劇を防ぐことができます。
いずれ、この戦闘についても詳しいレポートが公表されるでしょうが、早く読んでみたいものだと思います。