タリバンが戦術的撤退を主張

2009.11.4

 military.comによれば、パキスタン軍は南ワジリスタンの2カ所のタリバン拠点を占拠しましたが、タリバンの広報官は戦術的撤退であり、長期の戦争を戦う準備をしていると声明しました。

 2日間の戦いで、パキスタン軍は33人のタリバン戦士を殺害し、友軍兵士1人を失いました。同軍はウズベク人やその他の中央アジア人の戦士の拠点となっていたカニゴラム(Kanigoram)全域を支配に置きました。さらに、南ワジリスタンでタリバンの最大の基地のひとつであるマキーン(Makeen)近郊のチナ村(the village of China)も治めました。同軍はタリバンの指導者ワリウラ・レマン・メスード(Waliur Rehman Mehsud)が直接指揮をとっているというサラロガ(Sararogha)の掃討を開始しました。2日前に、同軍はサラロガとマキーンを包囲したと述べました。10月17日以降、これまでに殺害したタリバン戦士は330人、友軍の犠牲は35人です。一方、タリバンは死亡した戦士は11人だけだと主張しています。タリバンはパキスタン政府を罠に引きずり込んでいると主張します。「我々は長い他戦争の準備をしている。我々が退却し、パキスタン軍が勝利を得たと主張するこの地域は、我々が戦略の一環として立ち退いているのです。戦略はパキスタン軍を罠にはめ、長い戦争を戦わせることです」。記事は、現地での取材が制限されているため、この真偽を確認することはできないと書いています。米情報当局者が「The Long War Journal」に語ったところでは、すべての兆候は、タリバンの主力とその指揮官がこの地域を去り、後衛がパキスタン軍を悩ますために残されていることを示しています。

 やはり、この秋の攻勢も、これまでのパターンの繰り返しのようです。パキスタン軍は秋になると攻勢をはじめ、華々しい戦果をあげます。寒くなると軍事行動は困難となるので終了し、長い冬休みがはじまります。タリバンは春になると、再び活発に活動を始めるのです。なぜ、春に攻勢をかけて、タリバンの出鼻を挫かないのかが疑問ですが、毎度、こういう作戦を繰り返します。こうすれば、アメリカの支援を受け続けられると、パキスタン政府は踏んでいるのでしょうか?。こんなことを今後、何回繰り返せばよいのでしょうか?。なぜ、アメリカはパキスタン政府に文句を言わないのでしょうか?。日本だって、洋上給油活動で支援しているのだから、文句のひとつくらい言っても構わないはずです。対テロ戦争は焦点が定まらないまま、活動だけが続けられているのです。

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