military.comによると、アルカイダがソマリアに訓練キャンプを設置し、アメリカ人を含めた何百人という戦士を訓練しています。米政府は、地元ソマリ族の反政府勢力がアルカイダと連携しているとみています。
11月23日に、ソマリア系米人の大きなコミュニティがあるミネアポリスで公開された連邦裁判所の書類により、訓練キャンプの危険が明らかになりました。ソマリアで戦ったとされる数名のソマリア系米人に対する起訴は、訓練キャンプにいる訓練生がソマリア出身と、その他のアフリカ諸国、ヨーロッパ、アメリカ出身のソマリ族で構成されていることを明らかにしました。教官はソマリ人、アラブ人、西欧人で、小火器、機関銃、携帯式ロケット弾と軍隊式の戦術を教えています。訓練は厳格で、訓練生はプラスチックシートの上で眠り、時々食事は1日に1度になり、しばしば茹でたトウモロコシが出ます。訓練生はイスラムの休日である金曜日にだけパートナーと話すことを許されます。
元訓練生のダヒア・ムヒヤディン(Dahir Muhiyadiin)は、「メッセージは単純です。我々は西欧の不信心者が純粋なイスラム教徒を滅ぼそうとしていること、米政府がイスラエルが我々イスラム教のパレスチナ人を迫害しているのに何もしていないかを教えられました」と述べています。
アラブ語で「青年」を意味する「アル・シャバブ(Al-Shabab)」は、ソマリアの南部地域と首都モガディシュの大部分を支配し、政府を打倒して、イスラムの厳格な仕来りを敷こうとしています。アナリストは、このグループには2,000〜3,000人の戦士がいるといいます。また、パキスタン人、チェチェン人、スーダン人、ケニア人、タンザニア人その他の国の戦士が200〜400人いるとされ、多くはアフガニスタンとパキスタンで戦ったベテランスです。モガディシュの政府はアフリカ平和維持軍5,000人によって支援されていますが、首都の数ブロックを維持するのみです。
ミネソタ出身のソマリア系米人20人が聖戦に参加するために、先祖の祖国に勧誘されました。ミネアポリス在住だったシルワ・アメッド(Shirwa Ahmed)は、2008年10月29日にソマリアのボッサソ(Bossaso)で単独でトラックに乗り、自爆攻撃を行いました。現場から見つかった指から指紋が採取され、本人と特定されました。シアトル出身のソマリア系米人は、9月17日のアフリカ平和維持軍に対する自爆攻撃を行った疑いをかけられており、現在DNA鑑定の結果を待っています。
米政府は、こうした訓練生がアメリカに戻ってテロ攻撃を行うことを懸念しています。1ダースのアル・シャバブとつながりがあるアルカイダの工作員がソマリアにいると米国家対テロセンターのマイケル・レイター(Michael Leiter)は9月に米議会に対して、ソマリアのアルカイダ工作員がアメリカ人を帰国させ、攻撃を敢行させるのに関与するという重大な懸念を表明しました。この数週間で、アル・シャバブはウガンダ、ケニア、イスラエルとその他の国を攻撃すると脅迫しましたが、アメリカを攻撃すると公言してはいません。
ソマリアには、約1ダースのアル・シャバブとつながるアルカイダ工作員がいるとされます。その一人、ファズル・アブドラ・モハマンド(Fazul Abdullah Mohammed)は、1998年のケニアとタンザニアの米大使館爆破事件で指名手配されています。
米国務省は同様の訓練所が、アフガニスタン、パキスタン、北アフリカの一部、フィリピン、レバノン、イエメン、コロンビアで運営されているといいます。
ソマリアの警察本部長アビディ・ハサン・アワレ(Abdi Hassan Awale)は、訓練所はケニア国境から2マイルのインド洋沿岸の街ラスカムボーニ(Raaskambooni)の近くにあるといいます。教官のほとんどは西欧人を含む外国人で、正確にここに何人いるかは分からないけども、数百人と見積もっています。
このウェブサイトでは、ソマリアが次なる対テロ戦の部隊である可能性を指摘してきました。アルカイダのようなテロ組織は世界中に広がり、活動できる能力を持つので、包囲殲滅しがたいことを忘れて、この戦いを考えることはできないのです。日本が対テロ戦を考えうる上で、ソマリアは今から意識しておくべきポイントです。この訓練キャンプは位置が特定できたら、米軍が空爆して破壊するでしょう。すでに、米軍のアフリカ軍が動いているはずです。しかし、また別の場所に開設される可能性もあり、それ故に殲滅するのが困難なのです。ブッシュ政権はこうしたアルカイダの迅速で柔軟性に富む活動についていけず、むしろ無意味で硬直した戦略を繰り返しただけでした。
オバマ政権は軍をパキスタンに展開すると公約して成立したわけですが、むしろ今後は特定地域に焦点を絞らない、機に応じた特殊作戦を中心とすべきです。これは、2001年に私が最初に考えた対テロ戦略です。情報収集に力点を置き、資金源や訓練キャンプを軍事的・非軍事的な手法の両方で破壊していきます。大量の動員は不要で、必要なときに、必要な部隊を現地に送り込んで作戦を行います。各国政府との連携を強化して、アルカイダ要員が入国した国で逮捕できるようにします。派手な記者会見とは無縁で、伏せられる情報が多い秘密作戦となるので、大衆には理解を得られにくい戦略ですが、最も効果をあげる方法だと考えました。発展途上国の経済状況を向上し、貧困から来るテロを防止したり、宣伝活動によってアメリカへの敵意を和らげる活動も必要です。特に、他国の支持が得られるように軍を用いることが大事です。そのためには、大軍を長期間外国で作戦させるようなことはしません。軍人にも様々な者がおり、長期間外国に置けば置くほど、スキャンダルが起きる可能性が高まります。コラテラルダメージによる現地人への被害、意図的な現地人への暴行や殺害は、アメリカに対する敵意を強めるだけです。これを防ぐには、作戦に必要な期間だけ軍を現地へ投入し、兵士の緊張感が解ける前、精々1週間以内に引き揚げることです。作戦が数時間で終了するのなら、完了次第引き揚げることです。また、アメリカの経済・政治の哲学を改め、世界全体が協調する方向へ誘導しなければなりません。アメリカの利益だけを追求するやり方は止め、常に世界全体を念頭に置いた経済・政治を行うべきです。アメリカと連携すれば、長期的な安定を見込めるという認識を全世界に広げる必要があります。これはビジネス界からは抵抗が強いでしょう。彼らは短・中期的に利益が上がりそうな話に興味を示しがちです。しかし、目の前の利益を追求して、結局争いが起きるのは利益ではないということを、多くの人たちが理解する必要があります。多分、これがオバマ大統領がやらなければならない課題なのだと思います。
その他のニュースとして、military.comがバラック・オバマ大統領がアフガニスタン戦の出口戦略を求めていることをホワイトハウスが明らかにしていると報じています。アメリカのメディアは大統領が34,000人以上の増派を承認すると報じています。ワシントン・ポストは大統領が戦略を発表してから数日以内に、9,000人の海兵隊員がアフガンへの最終的な派遣の準備を開始すると報じました。
military.comによれば、2001年にアメリカがオサマ・ビンラディンが潜伏している場所を知りながら、取り逃がした件についての報告書が公表されました。この報告書はジョン・ケリー上院議員が中心となって、米上院外交委員会が作成し、pdfファイルで公開されています(pdfファイルはこちら)。内容はまだ読んでいないので分かりませんが、当時の対テロ作戦の状況を知るにはよい資料です。アフガン戦について、兵士個人が書いた戦記はあります。それはそれで1つの資料ですが、議会の報告書は軍の内部情報を見た上で書かれるので、目を通す価値があります。