ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)がアフガニスタンを訪問しています。military.comが長官とハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)の記者会見を報じています。
カルザイ大統領は、アフガン軍が武装勢力と戦えるようになるには5年かかるだろうと述べました。つまり、18ヶ月間の出口戦略は、2014年まで続くという意味です。また、カルザイ大統領は、アフガン軍に武装勢力の脅威から国を守るに十分な財源を供給するになるには、15〜20年間かかるだろうとも述べました。記事には汚職根絶に対するカルザイ大統領の決意なども書かれていますが省略します。また、military.comの別記事では、マクリスタル大将が米下院軍事委員会で「誇張のない事実は、銀の弾丸(silver bullets)はないということです」と述べたと書かれています。「銀の弾丸」は狼男を殺す弾丸のことで、普通は意訳して「特効薬」などと翻訳されます。議員と大将の問答も書かれていますが、それほど重要な話がないので省略します。
カルザイ大統領の声明は正直なところを述べていると思われます。18ヶ月で理想的な状態にはなりっこないことが、これで明確になりました。18ヶ月という期間は、アフガンの状況から導き出された準備期間ではなく、あくまでアメリカの都合によるものなのです。しかし、5年でアフガン軍が武装勢力と戦えるようになるとか、最大20年間でアフガン政府が軍を養えるようになると考えるべきではありません。もっと時間がかかるかも、あるいは達成できないかもしれないと考えるべきです。それまで、日本はアフガン軍・警察に資金援助をする決意を今から固めておくべきです。また、アフガンの税収を向上させるための技術援助も考えるべきです。さらに考えておくべきなのは、これが内乱に対応するための軍の建設だということです。仮にタリバンの解体に成功したとして、50万人程度に膨れあがった、外国の軍隊相手ではない軍・警察は不要になります。職を去る隊員が、皮肉にも武装勢力に戻っていく可能性も考えられます。それを防ぐにはどうするかも考えておくべきです。
マクリスタル大将の発言も正直な意見です。しかし、この言葉は勝つための確実な戦略がないことを示しており、意気が萎えます。よくなったことがあるとすれば、軍人たちが正直な意見を述べるようになり、これは対テロ戦の初期とは異なっているのが分かることです。当時は、アルカイダに復讐しろという世論の前で、軍人は景気のよい話ばかりさせられました。米政府は前進を強調しますが、8年間経っても成果はほとんどないというのが大勢の見方です。これからは米軍は正確な情報を開示して、世間の信頼を維持することが大事です。「敵と対話するのは屈辱」というアメリカ人の意識の改革も大事です。アルカイダは軍事的手法で打倒するのは難しく、人類が持つ文化の総合的な力を動員する必要があります。イスラム教徒と西欧が対立しているという意識を減らさない限り、アルカイダが活動する余地があります。これを解決するには「対話」が必要になるのは当然です。「犠牲者の写真を掲げて、復讐を叫ぶな」というスローガンは常識に反しているように聞こえるでしょうが、これから我々には重要になるでしょう。