米議会は新戦略を支持

2009.12.4

 military.comによれば、バラック・オバマ大統領が決定したアフガニスタン新戦略について、米議会は細部についての不安はあるものの、これを支持する意向です。

 来年、議会が新戦略を実行するための300〜400億ドルの追加を提供するとき、ほとんど問題は起こらないだろうとみられています。水曜日の上院軍事委員会と下院外交委員会では、新戦略について厳しい質問は出ませんでした。2011年7月の撤退期限を設けたことは、民主党の支持を得るのに重要でした。上院軍事委員会のカール・レヴィン上院議員(Sen. Carl Levin)は、「期日を設定することは、アフガン政府にいま欠けていた切迫感を与えるだろう」と述べました。共和党もロバート・ゲーツ国防長官から変更が可能との保証を得ました。他の点では、現場指揮官の要請を満たすので支持を表明しました。無所属のジョー・リバーマン上院議員(Sen. Joe Lieberman)も、ゲーツ長官に「あなたはまったく正しいバランスを得ました」と述べました。ゲーツ長官は大統領が期日までに少なくとも一部の部隊の撤退を開始することを約束したと述べましたが、大統領は国防総省が2010年12月までに最終的な評価を行った後で、ギヤを入れ替える権限をもっています。

 米議会の反応は予想以上に静かなところに落ち着いたようです。ジョン・マケイン上院議員も黙らざるを得なかったようです。しかし、オバマ大統領に有利な状況だから問題がないと考えるべきではありません。むしろ、誰も問題に気がつかない時こそ危ないのです。松本サリン事件の捜査が見当違いの方向に走り出したとき、私は強い危機感を持ちました。私の見たところでは、容疑者とされた方が犯人である証拠は1つもないのに、ほとんどのメディアが犯人視していたからです。真犯人が捕まらなければ、彼らは再び犯行を行うかも知れないと考えると、気が気ではありませんでした。知人にこの懸念を話しても、誰も疑問を持っていないことに気がつくと、心配はさらに深まりました。結果として、さらに大きな事件が引き起こされたのであり、状況を正確に分析して判断することの重要性を思い知らされることになりました。

 米議会の反応は、米国民の空気を読んでの判断であり、軍事的な分析の結果ではありません。つまり、8年間の戦争と近年の経済危機で疲れ切った米国民の意向を汲んだのです。もともと、米軍予算を決める権限を持つこの組織に、軍事的な判断能力はありません。議員たちは、自分が愛国者であり、裏切り者ではないことを証明するだけで手一杯で、軍事分析は二の次です。だから、ブッシュ政権がイラク侵攻を決めたときも、当時は一議員だったオバマ氏くらいしか反対しなかったのです。この時は、国民の復讐心を汲んで、侵攻に賛成しただけでした。

 次に何をするか。オバマ大統領はまだ示せていません。その決定次第で、今回の新戦略が生きることも、死ぬこともあります。問題はそこなのですが、誰もその話をしようとしません。つまり、今回の戦略決定で誰もが安心してしまい、本当の問題に目を向けていないのです。私の考えでは、こういう時が一番危ないのです。

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