アフガン警察が大麻畑を殲滅へ

2009.2.10



 military.comがアフガニスタンで大麻を栽培している農地を警察が米軍とアフガン軍の警護を受けながら破壊している模様を報じています。

 これまでアフガン警察はヘルマンド州で大麻の栽培を撲滅しようとしましたが、失敗に終わっていました。今年、アフガン軍の大隊が警察を守るために派遣され、ISAFの指導の下に、栽培されている大麻を刈り取る作業をはじめました。抵抗はないものと予測されましたが、迫撃砲、IED、ロケット砲、小火器、軽機、重機関銃、あらゆる武器で攻撃され、空襲を要請する必要すらありました。大麻は5つの州で主に栽培されており、暴力事件も同じ州で多発しています。昨年、ヘルマンド州では、60%の農民が大麻を栽培していました。植え付けシーズン前、昨年8月に、州は大麻を栽培させないため、33,000人の農民に小麦の種と肥料を配布しました。ところが、農民のほとんどは大麻を栽培する方を選んだのです。

 この作戦は確実に効果があります。栽培中の大麻をトラクターで踏みつぶして収穫できないようにするのですから、製品化された大麻を追いかけるよりは効果的です。大麻は身近な植物で、様々な利用方法があります。茎が繊維として利用できますし、種は食用に使われます。たとえば、七味唐辛子には種が利用されています。このため、撲滅が難しく、日本でも某格闘技団体の選手が摂取したことが明らかになり、問題となっています。今シーズンの大麻栽培の大半を無にできれば、タリバンへの影響はかなりのものになるはずです。

 一方、世論調査によると、NATOやアフガン政府はアフガン人の支持を失っていると、military.comが報じています。アフガンの34州、アフガン人1,534人を対象に、ABCニュース、BBC、ARDが共同で調査を行いました。調査期間は12月下旬と1月初旬です。

40%--- アフガンが正しい方向に向かっていると考える人。
2005年調べでは77%。
47%--- アメリカに好意を持つ人。2005年調べでは83%。
2008年だけでは18%急落。
77%--- 米軍とNATOの空爆による民間人の死が武装勢力の攻撃を上回り、受け入れがたいと考える人。
41%--- 西側が貧者を標的にしていると考える人。
28%--- 大衆の中に隠れる武装勢力を批判する人。
25%--- ISAFの攻撃が正当だと考える人。
2006年調べでは13%。
18%--- ISAFの兵数を増員すべきだと考える人。
44%-- 外国の軍隊が減ることを望む人。
37%--- 自分の地域のほとんどの人がNATOを支援したという人。2006年調べでは67%。
20%--- オバマ政権がアフガンをよくすると考える人。
36%--- 暴力が起こる原因が、米軍、アフガン軍、NATO/ISAF、あるいはアメリカやアフガン政府にあると考える人。2007年から10ポイント上昇。
27%--- 暴力の原因がタリバンにあると考える人。
2007年から9ポイント下落。
52%--- カルザイ大統領の仕事を評価した人。2005年調べでは83%。
49%--- アフガン政府を支持する人。2005年調べでは80%。


 ところで、space-war.comによると、アメリカはキルギスタン政府がマナス空軍基地を閉鎖するのは決定済みだと言ったことに対して、正式な通知を受け取っていないとして疑問視しているようです。

 おしなべて、アフガン情勢にもよいニュースはありません。タリバンは強力で、補給に問題が起こり、人民の支持も得られていません。前から言っていることですが、アフガンでも完全な勝利は得られないでしょう。軍事専門家たちも軍事的手法がこの問題を解決することはないと、かねてから主張しています。いずれ、双方が何らかの妥協をする必要が出てきます。そこで、世界の歴史に大きな変化が起こるはずです。だから、現在、イラクとアフガンで市民や兵士が死傷しているのは、非常に痛ましいことだと言えます。彼らの犠牲が何だったのかと考えると、胸が痛みます。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.