パキスタンがタリバンの法律を受け入れ

2009.2.17



 military.comによれば、パキスタン政府は武装勢力を鎮めるために、パキスタン北西部の地域「マラカンド(Malakand)」でイスラムの法律「シャリア法」を課す取り決めに合意しました。

 実施されるシャリア法は、比較的穏やかな内容とのことです。マラカンドでは武装勢力の活動が活発です。スワト峡谷(Swat valley)はタリバンに支配されており、彼らはこの取り決めを受けて十日間の停戦を宣言しました。また、5ヶ月間拘束していた中国人を釈放しました。最近誘拐された西洋人はまだ拘束されています。この取り決めに対して、パキスタン国内から批判の声があがっているのが、記事に紹介されています。イスラマバードの専門家カーディム・フサイン(Khadim Hussain)は、「この取り決めは明らかに降伏です。一部の地域を他の地域と異なったものとして扱えば、そこは分離するでしょう」と批判します。元判事のジェブド・イクバル(Javed Iqbal)は、「それは国に一つの法律がないことを意味します。それはこのようにして崩壊させるでしょう。もし、あなたがこれを認めるならば、あなたは認め続けるでしょう」と述べました。

 パキスタン大統領アシフ・ザルダリ(President Asif Zardari)は、CBSとのインタビューで「武装勢力が国家を支配しようとしている。タリバンは国家の多くの部分に存在している。我々はタリバンが国家を支配しようとしている事実に気がついている」と述べました。

 記事は、この取り決めはアメリカとパキスタン間に緊張をもたらすと書いています。しかし、問題はそれ以上に深刻です。たとえ、今回は穏やかな法が施行されるとしても、タリバンはもっと厳格に彼らの法を守るよう要求してくるでしょう。

 これまでは、パキスタンがアフガニスタンを不安定化するためにタリバンを利用してきたといわれていました。アフガンが不安定なら、パキスタンと武力紛争にはならないため、パキスタンには好都合だったのです。ところが、そこへアルカイダという後援者が現れました。タリバンは勢いづき、ついにはパキスタンの一部を支配するようになったというわけです。正に本末転倒です。これまで、タリバンを支持してきたパキスタン陸軍や情報部は、この事態を危機として認識しているのでしょうか。タリバンだけなら問題はまだしも簡単でした。彼らは麻薬取引が主な収入源で、それほど多くの資金を集められないからです。しかし、アルカイダの財布は全世界のイスラム教徒につながっています。善意で行った宗教団体への寄付金までが背後でアルカイダに流されるため、タリバンはより多くの活動資金を手に入れることができるのです。こうなると、アルカイダ自体の戦力は重要ではなく、彼らの戦闘部隊を弱体化させても、テロは根絶できないことになります。アルカイダはテロリズムのプロデューサーとしての役割を果たすことができるからです。今後、パキスタンはタリバンをアフガンまで交替させるために、血みどろの戦いを行わなければなりません。パキスタン政府は公式にタリバン根絶を宣言し、軍と情報部にいるタリバン支持者の首を切らなければなりません。

 このことは、以前からこのサイトでも指摘してきたことです。いよいよ、テロ問題が難しくなってきたと感じます。


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