解説:舞水端里発射施設の変化

2009.2.23



 舞水端里発射施設について、もう少しわかりやすく解説しておきます。前回紹介した記事を開いて、以下の解説をお読みください(記事はこちら)。

 まず、横に並んだ2つの地図の左側の方を見てください。地図はクリックすると拡大されます。

 同ページの解説文によると、舞水端里南西の海岸にキムチク(Kimch'aek・kmzファイルはこちら)があり、北西にキルチュ(Kilchu・kmzファイルはこちら)があります。どちらの街にも鉄道が来ています。キルチュは舞水端里から約45kmの位置にあります。この二都市が舞水端里の補給源となっていると記事は解説しています。韓国の新聞だったと思いますが、テポドン2号がトレーラーか艀で舞水端里に運ばれたと報じているのは、いずれかの街から陸路か海路で運搬されたという意味です。globalsecurity.orgの解説は、ロケットの部品は、恐らくは全天候に対応していない荒れた未舗装道路で運ばれていると書いています。大型の補給品はキムチクから施設近くのトンドン(Tongh-dong・kmzファイルはこちら)の波止場まで運ばれています(先にこの波止場の名前を誤記していました)。

 その下の道路の写真はキルチュと舞水端里を結ぶ道路です。この道路は6m幅で、険しい勾配があり、半径13mの狭い切り返しがあります。私の見解では、ここを長いロケット(特に長さが19mと見積もられる1段機体)が通るのは難しそうです。偵察を避けるために夜間に運搬するのは一層困難でしょう。

 その下の衛星写真は舞水端里の施設の位置と名称を示しています。重要なものを説明します。

Launch Control Bldg. 発射管制ビル
Vehicle Checkout Bldg. 最終組立施設
Tracking Site ロケット追跡施設
Probable Base HQ 発射施設司令部
Launch Site 発射台
Engine Test Stand エンジン試験場


 その下の最終組立施設の衛星写真では、30m×10mの建物が増設され、ロケットを運び入れるための道路が建物に合わせて新設されているのが分かります。2006年に撮影された写真と比較すると、どこが変わったかがよく分かります(写真はこちら)。この変化は2008年6月に最初に確認されました。最終組立施設では、完全にロケットを組み立てるのではなく、各段毎にチェックされます。そのために、ロケットを完成品と同じように並べる必要があり、ロケットの全長を超える長さの建物が必要です。元の施設の長さは54mでしたから、30m増設されたのと合わせると、最終組立施設の全長は84m程度になります。前回発射されたテポドン2号の推定全長は35.5mです。日本のH2Aロケットの全長が53mということを考えると、90mという施設の大きさは、かなり大きなロケットにも対応できる施設であることを連想させます。

 その下の衛星写真は発射台の近くに燃料注入施設が増設されたことを示しています。燃料を事前にここに備蓄していれば、打ち上げ準備の際の燃調注入作業を、より早く、より安全に行えます。この施設がない場合、タンクローリー車を何台も使って、何度も燃料ホースを付け替えながら作業を行う必要があります。

 写真を3つ飛ばした位置に、トンドン波止場の衛星写真があります。45m長の波止場は大型の物資の搬入口であると考えられます。小さな漁村には似つかわしくない巨大な波止場です。あまり水深もなさそうな港なので、艀を使って搬入していると推測されます。

 以上が重要な変化についての解説です。今回の改造を持ってしても、舞水端里の発射施設としてのレベルはそれほど高くはありません。

 他にも興味深い記事が出ていますが、手が回りません。それらも時間があったら、紹介したいと思っています。


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