アフガンの補給問題は意外に深刻?

2009.2.4



 アフガニスタンに関しては、増派よりも補給の方が気にかかるという奇妙な状況になってきています。

 military.comによると、カイバル地区のブリティッシュラージャ(British Raj)にある100フィート(30.48m)の橋が爆破され、輸送がストップしています。パキスタンが橋を修復中で、明日中には完了する見通しです。オーストラリア空軍のマーク・レーター中佐(Wing Commander Mark Larter)は、ルートの損失はほとんど影響がないと述べました。NATOはスピンボルダック(Spin Boldak・kmzファイル)で国境を抜ける、クェッタ(Quetta・kmzファイル)からチャマン(Chaman・kmzファイル)までの、別の陸路を持っています。さらに、カラチ(Karachi)から空輸も行っています。

 military.comの別の記事によると、米軍はキルギスタン大統領クルマンベク・バキエフ(Kurmanbek Bakiyev)は、同国のマナス空軍基地(Manas base)の米軍貸与を終了したと述べました。この基地は2001年の同時多発テロのあと、アフガン作戦のために米軍が使用していました。他にもウズベキスタンのカーシ・カナバッド基地(Karshi-Khanabad air base)も使用していましたが、2005年にウズベキスタンの人権弾圧問題で、米軍が協力関係を拒否し、基地を引き揚げていました(前の記事はこちら)。ロシアは戦略上の裏庭に米軍が駐留することに疑問を感じ、20億ドルの貸し付けと1億5,000万ドルの経済援助をキルギスタンに与えることを約束しました。ロシアもキルギスタンのカント(Kant)の空軍基地を使用しています。アメリカはマナス基地の貸料6,300百万ドル、経済援助1億5,000万ドルを提供してきました。

 military.comによると、統合参謀本部議長マイク・マレン海軍大将(Navy Adm. Mike Mullen)は、アフガン戦争はベトナム戦争とは違うという見解を示しました。この記事は簡単に紹介します。マレン大将は、ベトナム戦争と違い、米軍と連合軍は占領軍ではないのが主な理由だとしています。しかし、大将は、我々がそういう立場だというメッセージをアフガン国民に送ることができないとも述べました。

 昨日、兵士にやる気を出させる「コーンチップス」などの重要な戦略物資が欠乏しているという情報が出たばかりですが、今日のニュースと合わせると、やはり補給路に問題が起きていると考えざるを得ません。今回、爆破された橋は長さが短く、修復には大した時間はかかりません。しかし、修理のために数日間輸送がストップすることで、各地の基地で物資の不足が起こります。こうなると、軍は重要な物を優先して送るようになり、コーンチップスは余計に兵士の手に届きにくくなるわけです。南方ルートのことは、今回初めて聞きましたが、このルートに問題がないのなら、もっと前から報じられていたはずです。今回出てきたことには、補給問題隠しを感じます。キルギスタンの空軍基地も札びらでロシアにもぎ取られたようです。タリバンはこまめに輸送ルートを攻撃することで、米軍に物資の不足を起こさせられます。米軍がそれを防ぐのは困難です。マレン大将が「ベトナム戦争ではない」という言葉は虚しく響くだけです。アフガンの補給問題は、いま報じられているよりも深刻ではないかという懸念が消せません。この問題は近い将来、もっと大きな形で知らされる可能性が非常に大きいと考えます。

 そして、再び陸上自衛隊の輸送ヘリコプターを出してくれという要請が出される可能性を考えざるを得ません。まもなく、ヒラリー・クリントン国務長官が来日する予定です。この時に、そんな話が出るとは思いません。しかし、米民主党も日本のアフガンでの貢献は評価しており、ヘリ部隊くらいなら出せるだろうと考えているかも知れません。


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