military.comによると、イラクのヌーリ・マリキ首相(Nouri al-Maliki)が、米軍は完全に治安が回復していないとか、米軍が去った後で攻撃が再発する可能性が高い地域から去ることはないだろうと述べました。
AP通信とのインタビューでマリキ首相は、オバマ大統領と米政府高官に、いかなる撤退もイラクが賛成し、イラク政府との調整が必要だと言っていると語りました。「私は治安が100%回復し、支配下にあると考えられる地域以外では、どのような撤退も望みません。少しでも攻撃の再会の危険性がある地域では、撤退は延期されるでしょう」と述べました。記事は、マリキ首相が米軍の撤退を延期するかもしれない地域を特定しませんでしたが、3番目に大きい都市モスル、バグダッドの北東にあるディラヤ州を含むと考えられると書いています。
バグダッドの副司令官フレデリック・ルーデスヘイム准将(Brig. Gen. Frederick Rudesheim)は、6月末にバグダッドから戦闘部隊が撤退した後、米軍は武装勢力の補給ルートや地方の隠れ家を攻撃することに焦点を当てると述べました。また、彼はバグダッド西方郊外にある巨大なキャンプ・ビクトリー(Camp Victory)は閉鎖しませんが、グリーンゾーンの米軍部隊については、議論の最中で、米軍の移行チームがイラク軍を訓練するために都市部の駐屯地に残留するとも述べました。米軍とイラク軍はスンニ派民兵組織「イラクの息子」がバグダッドと周辺の治安を守ることを期待してきました。昨年、イラク政府は彼らへの給料支払いを米軍から引き継ぎ、シーア派の陸軍と警察の中に、彼らの20%を参加させることにしました。残りの民兵は民間の仕事を得る見込みです。彼らに給料は支払われ続けていますが、予算の問題が統合を遅らせています。7月中旬に石油価格が1バレルあたり150ドルから46ドルへ下落し、イラク議会は警官の雇用を凍結して、586億ドルのの年間予算を通過させました。このため、民兵の一部が武装勢力に戻ってしまう危険性をルーデスヘイム准将は懸念しています。
キャンプ・ビクトリーはバグダッド国際空港の近くにあり、ここは補給のためにも閉鎖はできないのでしょう。マリキ首相の意向は、現在行われている討議の中で検討されることになり、まだ決したわけではありません。しかし、イラク側から要望があれば、オバマ政権も耳を貸さないわけにはいきません。それよりも、民兵組織「イラクの息子」への処遇が気になります。スンニ派とシーア派が同じ組織でやっていけるのかとか、警察と軍に統合されなかった民兵が武装勢力に参加する危険性が気になります。もともと、私はスンニ派が武装勢力と手を切った経緯を疑問視ししています。また、シーア派が中心のイラク軍にM1戦車が配備され、一人前の軍隊の装備を整えるとなれば、イラク国内におけるイラク軍の権威は急速に高まります。今のところ、スンニ派はイラク政府に協力するつもりだと記事は書いていますが、将来は分かりません。これらはイラクを不安定にする要素として、頭に入れておかなければなりません。
なお、military.comによれば、米軍が先月、イラクのバグダッド北東60マイル(約96.6km)でイランの無人偵察機を撃墜していたと発表したとの記事もあります。
イランの無人偵察機「Ababil 3」は撃墜される前に1時間以上追跡され、米軍のジェット機によりイラク空域内で撃墜されました。匿名のイラク高官は、無人偵察機が国境付近のマンダリ(Mandali・
kmzファイルはこちら)に墜落したと述べました。