テポドンと同時に複数ミサイルを発射か?

2009.3.23



 space-war.comによれば、米軍は北朝鮮がテポドン2号の打ち上げと同時に、複数のミサイルを同時に発射する可能性に備えています。

 2006年のテポドン2号打ち上げの際、北朝鮮は6基のミサイルを発射しました。韓国駐留米軍指揮官ウォルター・シャープ大将(General Walter Sharp)は、北朝鮮が4月4日から8日までの間に、他に何をするのかを注意深く見守っている、と述べました。北朝鮮は800発以上のミサイルを保有しており、アメリカは朝鮮半島にペイトリオットミサイル64基を配備し、韓国は24基を持っています。

 シャープ大将は正直にも、ペイトリオットミサイルが軍事施設しか守れないことを明らかにし、「米軍はペイトリオットミサイルが“我々の最も重要な実践の資産を守る”最良の方法で配置されるのを保証するために働いています。しかし、それは他のエリアを無防備のままにします。我々は…我々と韓国の両国はさらに多くを使うことができ、我々はそのために懸命に働いています」。シャープ大将は安心させるつもりで発言したのでしょうが、これはペイトリオットミサイルでは対応できないことを明言したのも同じで、逆に不安がつのるだけです。それでも、国民に万全の態勢を整えたかのように偽っている日本政府よりは、正直でよいのかも知れません。このシャープ大将の発言を取り上げる国内メディアは恐らくないでしょう。彼らは日本政府と一緒に大騒ぎをするだけです。それが日本国民にどれだけ有害かなどは考えようとしません。

 2006年に北朝鮮がテポドン2号を発射した際、私は短距離ミサイル6発が同時に発射された理由が分かりませんでした。それは科学技術向上のためにはまったく意味のない行為に思えたからです。しかし、今はそれがデモンストレーション効果を高めるための工夫であったと理解しています。人工衛星ミサイルの打ち上げや科学実験としてだけ認識されると困るので、北朝鮮は軍事用ミサイルを同時に打ち上げ、より多くの関心を惹きつけようとしたのです。北朝鮮がテポドン1号を打ち上げた際、米政府と韓国政府から人工衛星ロケットだったとの公式見解が出されました。北朝鮮も公式発表で人工衛星ロケットと主張しましたが、本当は弾道ミサイルだと認識して欲しかったのです。そこで、テポドン2号では軍事ミサイルを同時に発射し、その関連性を誇示したというわけです。こんな工作はあまりにも馬鹿げており、普通の国ならやらないことです。しかし、北朝鮮のような瀬戸際の国にとっては、真面目に実行する事柄なのです。

 こうして見てくれば、テポドン2号が弾道ミサイルだと言って騒ぐことが、いかに馬鹿げているかが分かってくるわけです。日曜日のNHKの政治討論番組でもテポドン2号の問題が取り上げられましたが、その議論ははっきり言って茶番でした。

 ところで、北朝鮮の動きがおかしいとは思いませんか。来月4〜8日の間に打ち上げるのなら、そろそろ発射台にテポドン2号を据え付けていなければなりません。2006年の打ち上げでは、発射台に機体を据え付けてから打ち上げまで、約20日間かかりました。今回、燃料供給施設を新設したから、作業期間は前よりは少し短くなる見込みですが、もう発射台へ機体を乗せないと、時間的に間に合わないはずです。globalsecurity.orgによると、北朝鮮は打ち上げ予定日の間、領空内にある2つの航空ルートを閉鎖すると通告しました。海域に続いて空域も制限したわけで、打ち上げの準備だけは着々と進めています。この辺の動きも私には引っかかっています。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.