産経新聞と読売新聞が、ここに来てテポドン2号の迎撃について「当たるわけがない」という記事を報じました。時事通信が23日に「突然撃ってきたら当たるわけがない」という政府筋の見解を報じており、これに関連した記事のようです。
政府筋としてだけ示された情報源は、おそらく、現役の閣僚か閣僚経験者だと思われますが、「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。当たると思うか」とその人物が石破茂(現農水相)に尋ねると、石破氏は「当たると思う」と答えたそうです。さらに「実験で今から撃ちますよと言って、ぴゅーっと来るから当たるんで、いきなり撃たれたら当たらないよ」と問うと、石破氏は「それは信じようよ」と答えたと、記事は書いています。
石破氏はミサイル防衛の導入を決めた張本人です。「当たらない」というわけはありません。2005年に出版した自著「国防」にも「実際のところ北朝鮮からミサイルが飛んできたとき、現時点でも六〜七割以上になると思います。(136p)」に書いています。さらにSM-3については、「今や九割以上の成功率になっています。(139p)」としています。おそらく、石破氏が言いたいのは、実験では9割撃墜できて、実戦では6〜7割程度ということです。しかし、実験で9割命中したという話の根拠が不明ですし、SM-3とPAC-3のどちら、あるいは両方の話なのかも分かりません。米ミサイル防衛局が発表している資料では、SM-3の迎撃成功率は78%であるように思われます。2005年頃までには1回しか実験で失敗していませんが、2005年末まで見ても7回しか行われていません。これで信頼できる命中率を主張するのは無理というものです。
弾道ミサイル自体、実戦での命中精度は実験よりも著しく劣るといわれており、迎撃ミサイルの場合、それがどの程度反映されるのかは不明です。しかし、あらかじめ飛行コースが分かっている実験では、オペレータは安心して迎撃ミサイルを誘導できます。実戦では、そういう余裕がありませんし、ミサイルがどのように飛行するかが分からない中で迎撃ミサイルを誘導していくことになります。迎撃実験の中身は機密とされ、ごく一部の情報しか公開されません。どれほど実戦に近いテストが行われているのかは関係者しか知りません。それで「信じようよ」と言われても、私はその気にはなれません。